『神は妄想である』 リチャード・ドーキンス(早川書房)



 「この本は、読者の意識を高めること、すなわち無神論者になりたいというのが(略)勇敢ですばらしい願いでもあるという事実を、読者に気づかせることを意図したものである」
 イギリスの生物学者である著者は、序文でそう宣言した。

 なぜ世界は、だれかに設計されたとしか思えないような、複雑で美しい姿をしているのか…。それは神が存在するからではなく、「ダーウィン流の自然淘汰によって圧倒的に優美に説明できる」と力説するまでは、まだ序の口。人間が道徳的であるのに宗教など不必要。宗教は世界にとってそれほどよいものではない(むしろ有害)。親が子供を自分の宗教に教化するのは許されない……。宗教への敵意があふれ出る。

 識者アンケートでは進化生物学者の佐倉統さんから、「自然科学からの宗教への挑戦状。内容に対する賛否はともかく、宗教と科学の関係は、現代社会のあり方を考える際に欠かせない問題である」と推薦の言葉があった。読者からも「テロを含む世界の諸問題の多くは宗教問題に起因する。市場開放も移民受け入れも無頓着ではいられない」(千葉県の石橋香織さん・39)、「宗教との決別の論理を展開する迫力に圧倒された」(東京都の泉美代子さん・77)など賛辞が寄せられた。

 本書執筆の動機のひとつに、イスラム原理主義者による2001年同時テロと、それに報復したブッシュ米大統領と彼を支持するキリスト教原理主義者に対する、科学者の徹底した知的嫌悪があることは、容易に想像がつく。もっとも、むきになって宗教を否定する著者の態度には、まるで「無神論原理主義」の口吻さえあるのだが。

 山形県の本間育美さん(31)は「宗教が必要かどうかといわれたら、肯定の立場を取る。宗教は人間の精神に深みを与え、それを必要とする人もいるからだ。しかしあえて宗教との決別を主張したくなるほど、宗教の功罪の罪の部分は見過ごせない」と書いた。

(近藤康太郎)

(朝日新聞 2010-10-3)



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