「読むと書く…井筒俊彦エッセイ集」 (慶應義塾大学出版会)



 東洋哲学を広く世界に発信した著者は、海外生活が長かったこともあって、国際的な知名度の方が高い。その後、日本に戻って80年代から93年に没するまで活躍し、晩年はイスラーム神秘主義をも融合させた新しい東洋哲学の確立をめざした。
 日本では、東洋思想の中にイスラーム哲学を加えた点が大きな功績である。欧米では逆に、西洋哲学やイスラーム哲学と、老荘思想などの東洋の英知を結びつけた点が高く評価されている。

 それを可能にしたのは、欧米諸語、中国語、アラビア語、ぺルシヤ語などの古典を自在に読みごなし、いわば古今の哲学者たちと直接語り合う異能であった。その知的遍歴が本書に詰まっていて、飽きさせない。
 内容的には、著作集に収録されていない小作品群が網羅的に集められている。古くは39年から晩年まで、時代的には半世紀にわたる。その時間差にもかかわらず、気迫のこもった文章はいずれもみずみずしい。

 哲学や神秘思想に関心がある方には、若い方も含めて、ぜひ手に取っていただきたい一冊である。
(小杉 泰:京大教授)

(朝日新聞 2009-11-22)



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