『余震、そして中間層がいなくなる』 ロバート・ライシュ(東洋経済新報社)



■富が集中、金が回らず危機に
 余震と言っても、本書の意は2008年の経済危機後……現在の米国の経済問題のことだ。
 著者はクリントン政権時の労働長官。とくに問題視しているのは、富裕層への富の集中、中間層の経済的な下落だ。現在の米国は最上位1%で国民総所得の約4分の1を得る一方、中間層の平均賃金は30年間ぽぽ横ばい。適切な量のお金が回らないために、住宅ローンをはじめとした借金漬けに陥った。要は、大多数の中間層が消費できるようにお金が回ることが、米国経済を再興する鍵だと著者は言う。

 富が集中した要因にはグローバル化や情報化などもあるが、根本は税制および社会への再分配の采配が歪だったためだ。だが、それを変えるのは容易ではない。政治や経済の実力者は人事交流でインナー・サークルを守ることに力を注ぎ、政治家は業界から献金をもらって業界寄りの法制度にくみする。政治資金規正を含む、国の骨格部分から変えないことには、米国は一層悪化すると著者は懸念する。民衆の怒りによる大変な事態(いまの英国を想像させる)を招かぬためにも、いまから税制や再分配の仕組みを変えねばならないというのが本書の主張だ。

 本書の指摘には日本にも共通する部分が多数ある。ただ、米国よりマシな部分もある。皮肉にも、そこに希望を見いだせる。

森 健(ジャーナリスト)

(朝日新聞 2011-8-21)



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