『彼女はなぜ「それ」を選ぶのか?』 パコ・アンダーヒル(福井昌子訳、早川書房)



■仕様や性能ではなく物語性
 モノが売れない、という嘆きをひんぱんに聞く。しかし本当だろうか。周囲の女性たちの旺盛な消費行動を目の当たりにしていると、従来の男性目線の売り方が機能しなくなっているだけでは?と思う。

 博報堂のアドバイザーも務めるアメリカ人マーケッターの著者も「日本人女性に購買力があることは十分に裏づけられている」。だったら嘆くよりも、どうしたら彼女たちに売れるのかを考えた方がいい。この本には家電、ギャンブル、ダイエット、オーガニック食品、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)と、あらゆる現場で著者が見聞きした女性の消費っぷりが満載だ。

 その中でひとつ、女性消費者に絶対的に共通しているものがある。「物語性」だ。たとえばテレビを買う時、男性はスペックに目を奪われるが、女性はひたすら「そのテレビを置いた居間にいるアタシ」を想像する。仕様、性能ではなく、それがいかに自分を快適にしてくれるかが、至上の判断ポイントなのだ。

 著者が抽出する女性消費のキーワードは「清潔」「安全」「思いやり」「調節」。調節とは、自分で思い通りにコントロールできること。そして重要なのは、それらが達成されると、男性にも売れるようになる、ということ。ああ、女性を大切にしなければ。

滝野由美(ジャーナリスト)

(朝日新聞 2011-9-18)



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