世界を変えた6つの飲み物」


 この本の狙いについて、著者はプロローグで「考古学者が石器、青銅器、鉄器と主要な道具の材質で歴史を分けるように、各時代の中心的存在だった飲み物によって世界史を区分けすることもできるはずだ」と書いている。意表を突く発想だが、それが可能ならば確かに面白い。
 では「世界史を区分けする」飲み物とは、いったい何か。この本で取り・上げられているのは次の6つだ。

 メソポタミアとエジプトの古代文明を支え、社会、宗教、経済生活において中心的な役割を果たしたビール。ギリシャの思想をはぐくむ活力源となり、広範な海洋交易の基盤ともなったワイン。大航海時代に登場し、奴隷売買の際の通貨代わりとして北米の植民地でもてはやされ、合衆国建国にも重要な役割を果たした蒸留酒。

 さらに、中東からヨーロッパにもたらされ、「理性の時代」にふさわしい進歩的な思想を生む土壌となったコーヒー。イギリスと深いかかわりを持ち、帝国主義と産業の拡大をつなぐ役割を果たした茶。そして最後が、アメリカ合衆国が超大国へと変身する後押しをして、大量生産、消費の資本主義の象徴ともなったコカ・コーラである。

 これらは一般に考えられている以上に歴史と密接に結び付き、人類の発展に大きな影響を与えてきた。「飲み物の底には、長い長い歴史が沈んでいる」のである。本書はそれをさまざまなエピソードを交えながら興味深く描いている。それぞれの飲み物はこれまで単
独で語られることはあっても、本書のように歴史を動かしてきた一つの要因としてまとめた通史は珍しく、貴重な試みと言えよう。

 本書の最後で、著者は「未来を代表する飲み物」にも触れている。意外にも、それは水なのだ。人類の飲み物の歴史は、その原点に戻っていくのだろうか。水は貴重な天然資源であり、人々の生命と健康の基盤である。その単純で動かし難い事実に、改めて目を向けなければならない時代が来ているのかもしれない。

(琉球新報 2007-5-20)



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