ヨガ禁止令に思う



 イスラム教を国教とするマレーシアで、国家ファトワ(宗教見解)評議会が「ヒンドゥー教の教えに基づくヨガは、イスラム教とは相いれない」と「ヨガ禁止令」を出したという。ヨガは「禁止」しなければならないほど有害なものなのだろうか。宗教関連のトピックスには理解不能なことが多い。数年前にも、日本産の化学調味料の中に「不純なエキス」が混入していると問題になった。

 ヨガは、美容と健康のための手軽な運動ということで世界中でブームになっているが、宗教色が特に濃いという印象はない。元来はヒンドゥー教の修行法のひとつだったのだろうが、今では立派に「健康法」として独立している。手元の国語辞典では、『ヨガ(瑜伽=ゆが)とは梵語で「結びつける」の意。呼吸を整え、心を統一し、瞑想の世界に入って……、またその修行法』とある。

 ヨガといえば、以前テレビで「インド・ヨガ聖地への旅」という番組を見た。女優の菅野美穂が案内役となり、ヨガにゆかりのインド各地をめぐる旅であった。彼女はヨガを始めて一年という。現地のヨガスクールでも優雅にヨガポーズを決めていた。ラストシーンで高齢の聖人と面会する場面がある。
 
 聖人は「太陽は日本から昇り、インドに沈む。日本人は太陽を拝みますよね」といって、彼女に「太陽礼拝」というヨガを勧めた。とても感動的だった。私の母親も毎朝太陽を拝んでいるが、太陽を崇拝するのは世界各地で古くから行われていたのだろう。仏教の大日如来や阿弥陀仏も太陽信仰に起源があるのかも知れない。

 インド人の80%はヒンドゥー教徒で、ベジタリアンが多く、牛を愛し、牧歌的なイメージがあるが、ヒンドゥー教には偶像崇拝やカースト制度があるので、イスラム教では原理的に容認できないのだろう。イスラム教とヒンドゥー教を融合した「シーク教」の例があるので、両者の相互理解は全くの夢物語ではないはずだが、現実的には困難なのか。

 「頑固な宗教指導者の頭をちょっと切り換えれば、世界はもっと住みやすくなるのではないか」と日本人として単純に考えるのだが、原理原則を厳格に守る「一神教」の世界には通用しないのかも知れない。

(2009-12)



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