香港デモの行方



 今年の最大の出来事は、香港のデモだった。6月には200万人という香港返還以降、最大規模のデモとなった。
 抗議運動は、香港政府が中国への容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案を立法会(議会)に提出したことを受け、改正案撤回を求めて始まった。その後、デモ隊の訴えは、警察のデモ隊への暴力を調べる独立調査委員会の設置や行政長官選挙の民主化などの「5大要求」に拡大した。

 香港政府は、緊急状況規則条例(緊急法)」を約50年ぶりに発動し、政府への抗議デモで参加者がマスクなどで顔を覆う行為を禁じる「覆面禁止法」を制定した。香港政府は10月に逃亡犯条例改正案を撤回したが、抗議運動は半年を経ても収束していない。

 この半年を通じて、中国の悪辣なやり方が、世界中に知れ渡った。「覆面禁止法」は笑ってしまうが、ITを使った中国の冷酷な管理社会の実態が明らかになった。こういう方法で、チベットやウイグルで住民を監視し、抵抗する者を次々に逮捕しているのだろう。背筋が寒くなる。しかも、これがいかに非人道的な方法であるかの自覚もない。批判を強める欧米諸国に対し「植民地時代にあんた方がやっていたことだ」と居直っている。

 習近平は国家主席の任期を撤廃し、卑劣な独裁者となった。ライバルを蹴落とし、不正畜財を繰り返し、後戻りできなくなった。北朝鮮のように突き進むだけだ。欧米諸国も中国の14億の市場をやすやすと手放すことはできない。日本も同様だ。毅然とした態度をとるべきだが、経済界に反対されているのだろう。来年には習近平を国賓として迎えるという。

 米国は「香港人権民主法案」を成立させた(2019-11-28)。中国が「一国二制度」を守っているかどうかを米政府が検証し、香港に認められた関税などの優遇措置の是非を毎年、見直すことを義務づける内容となっている。
 香港の次は台湾だと言われる。台湾が中国に蹂躙されるとなれば、米国も黙っていないだろう。香港デモがどういう形で収束するのか。世界は暗澹たる気持ちで見守っている。

(2019-12)



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