大説でなくて小説(第40回) 曽野綾子



 ………資本主義が帝国主義であり、支配階級と非支配階級を作り、支配階級がそうでない人々に圧迫を加えるという図式もしきりに宣伝されたが、資本主義社会には結果的に、スターリン、毛沢東、チャウシェスク、金日成親子のような桁外れの権力者が生まれることはなかった。

 資本主義社会の権力者は小金持ちに過ぎず、その経済的基盤はすぐなくなり、地位も簡単に揺らいだ。社会党が落ち目になるのは、これらのことを少しも見抜けず、間違った思想を、長い間人々に押しつけて、人民を圧迫する思想に手を貸してきたからである。

(週間ポスト 1991-7-12)



目次 トップ


inserted by FC2 system