儒学を再評価



 中国では孔子の思想をめぐる論争も一段落し、いまや儒学の現代社会における機能が注目されている。「人民日報」によると孔子の故郷、山東省曲阜市で開かれたシンポジウム「孔子の思想と21世紀」では、世界の文化の中に儒学をどう位置づけるかがホットな議論になった。シンポでの学者たちの発言を、同紙は次のようにまとめている。

 中国文化の核心の役割を果たしてきた儒学は、キリスト教、仏教、イスラム教のような宗教ではないが、社会的な影響はそれらを超えている。長い間、近代化・西洋化が支配的な考え方だったが、それが間違いであるとようやく認識されてきた。儒学と東洋文化が再発見、再評価されるようになった。西洋文化は道徳や人生観、価値観に科学とは相いれない宗教を取り入れたため、危機に直面している。対照的に儒学は非宗教的で人文主義的学説だ、というのが再評価の根拠だ。

 同シンポでの提言によると、未来社会では孔子の言う「仁義」つまり道徳が基本になる。仁義を人間の天性とする論理は、長い歴史の中で中国人の性格を決定づけるものになっている。それはまた「真を求め、善を尊び、美を愛する」という人類共通の天性を反映しているのだ。また儒学は仁義を第一とするが、決して功利を排除するものではない。義と利の調和が取れない場合に限って、義を優先させるべきだと主張している。

 儒学がいかに現代の経済発展と結び付くか、いかに若い世代に受け入れられるかが、21世紀に直面する最大の問題。この二つが解決されなければ儒学の前途は楽観を許さない。なお、儒学の本流はあくまでも孔子の思想で、後世に歪曲されたものではないそうだ。

(琉球新報 1995-1-19)



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