国連は二重基準…順守しないイスラエルを容認



 武力行使を容認する新たな国連安全保障理事会決議案がイラク問題で最大の焦点となる中、安保理決議の順守をめぐって「国連は二重基準ではないか」との批判が強まっている。安保理決議違反を理由に、対イラク武力行使を含む「すべての必要な措置」が検討されながら、過去の決議を無視し続けるイスラエルへの「懲罰」は問われないからだ。

 背景にはイスラエルを強力に支援する米国の存在があるが、各国外交筋からは「決議には従うべきものと、従わなくていいものがあってはならない」との指摘が出ている。
 
 国際平和と安全の維持に責任を負う安保理の決定には、その受け入れと実行が全加盟国に義務付けられている。拘束力のない国連総会決議と違い、安保理決議の表決で常任理事5カ国が拒否権を持つのは決議の拘束力を担保するのも目的だ。

 米政府は、イラクが湾岸危機を引き起こした1990年から計16の安保理決議に違反したと指摘。「国連は単に言葉や希望だけではない」(ブッシュ米大統領)として、イラクに決議履行を迫っている。
 一方、国連活動を監視する非政府組織(NGO)の「グローバル・ポリシー・フォーラム」によると、イスラエルの安保理決議違反は、同国が第三次中東戦争で得た占領地からの撤退を求めた決議242(67年)から計29件に上る。

 こうした指摘について米政府当局者は、米紙クリスチャン・サイエンス・モニターに「イスラエルは民主主義が機能しており、隣国との平和構築を望んでいる。イラクは野蛮な独裁者が隣国を攻撃、自国で大量破壊兵器を使用した」と述べ、決議違反だとしても内容は異なると強調した。

 一方、アラブの国連外交筋は「イスラエルの核兵器保有は公然の秘密。核査察受け入れを要求しないのはおかしい」と主張、「米国に牛耳られた国連には、明らかに二重基準が存在する」と批判した。

(琉球新報 2002-9-30)



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