ナチ犠牲者「休眠口座」3万6千…スイスがユダヤ人資産最終報告



 第二次大戦中のナチス・ドイツと中立国スイスのかかわりを検証していたスイス政府主導の「独立専門家委員会」は22日、ナチスの犠牲になったユダヤ人の所有とみられる「休眠口座」がスイス国内に約3万6千あったなどとする最終報告書を発表した。

 略奪されたユダヤ人資産をスイスが戦後も保有しているとの批判が1990年代に高まり、実態を解明するために委員会が96年12月に設置された。スイスにとって「過去の清算」ともいえる委員会の活動は、今回の報告書で区切りを迎える。

 報告書によると、ナチスに殺害されたり国外追放されたユダヤ人のスイス口座は戦後、スイスの各銀行が保有を続けた。犠牲者の家族らが預金の引き出しを求めた際「記録の保管義務は10年間しかなく、所有者に関する情報が残っていない」などとして、支払いを拒否した銀行もあった。

 極端な例では、行員が休眠口座の預金を着服したことが判明したものの、刑事訴追すれば事件が公になって世論の批判にさらされるため、着服が「不問」に付されたこともあった。報告書は、スイスが徐々に法律や政令を通じて休眠口座の特定を進めてきたとしている。

 22日に発表された報告書は、委員会の調査活動の総合版。このほかに「略奪された美術品の行方」や「大戦中のスイス貿易」など、テーマ別に25巻に及ぶ詳細な報告が発刊された。

(琉球新報 2002-3-23)



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