上海で数万人反日デモ


 中国・上海市で16日に起きた反日デモはこれまでで最大の数万人規模に膨れあがり、デモ隊は日本総領事館に押しかけて投石するなど暴力行為に及んだ。邦人2人がけがをしたほか、総領事館の窓ガラス13枚が割られた。出動した警察官や武装警察部隊は強く制止しなかった。日本大使館は同日、中国外務省に抗議した。浙江省杭州市、天津市でも数千人規模のデモが行われた。

 上海には中国国内で最多の日系企業約4500社が進出し、在留邦人は約3万4000人に上るとされる。日中経済関係の緊密さを象徴しているとも言える上海での反日行動により、両国関係のいっそうの冷却化は避けられない。政府は17日に北京で行われる日中外相会談で、重ねて強く抗議する方針だ。

 総領事館や北京の日本大使館によると、領事館近くの路上で、デモを見ていた日本人の男性2人がデモ隊に囲まれた。2人は近くのパトカーまで逃げて、車内に保護されたが、追いかけてきた群衆がパトカーのガラスを打ち破り、2人とも頭をガラスで切って軽いけがをした。

 また付近の日本料理店など10軒以上がデモ隊の攻撃を受けた。うち1店は破壊された後、火災が発生。火はすぐに消えたものの、放火の疑いも出ている。

 大使館は16日、中国外務省の崔天凱アジア局長らに対して総領事館への暴力行為の中止と邦人の安全確保などを求め、改めて抗議した。崔局長は「関係部門に伝える。安全確保に全力を尽くす」と返答した。

 午前11時半(日本時間午後0時半)ごろまでに総領事館に続々と到着したデモ隊は、6時間以上にわたり総領事館を包囲。「愛我中華(私の中華を愛する)」と大声をあげながら投石などを繰り返した。汚物も投げ込まれたという。総領事公邸にも石などが投げ込まれた。警官隊が過激な行動を制止する様子はほとんど見られなかった。

 参加者の多くは午後5時ごろに当局が準備したバスなどで総領事館前を離れたが、一部は日本人が多く住む地区に進み、日本車をひっくり返したり、日本語の看板を壊したりし続けた。

 上海市公安局は15日に未許可デモを認めず、破壊行為を取り締まる方針を発表していた。結局、破壊行為を伴うデモに発展したことについて、市の対外窓口である市新聞弁公室は16日、朝日新聞の取材に対し、「公安当局には昨晩まで(デモ)申請もなく、許可もしていない。学生らは愛国の気持ちを表現し、デモを行ったと思う」と話した。

 一方、これまで大規模デモがあった北京、広州などでは厳重な警備体制が敷かれ、騒動はみられなかった。
 インターネット上の情報では17日も、四川省成都市、山東省済南市、遼寧省瀋陽市など十数カ所でデモが計画されている。

(朝日新聞 2005-4-17)



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