牛って神様ねえ


 日本の大方の皆さんは、インドにとって牛は神様だから食べないのだと思っているようである。インド旅行中、沖縄の皆さんからインド人は牛肉を食べないし、店で売られてもいないということで、「牛って神様ねえ?」と尋ねられたことがある。実は、インド人が牛を大事にしている理由は三つほどある。

 まず、精神的に牛を母のように尊敬しているのである。というのは、人の赤ちゃんは、母親の母乳を飲んで成長する。母乳がなくなれば、ありがたいことに牛の乳がある。牛が母親に代わり子どもの命をつなぐ役目をしている。だから人々は、子どもの時に牛の世話になったことに感謝の気持ちを持っていて、牛を母のように大事にする。これが大きな精神的理由である。

 次に、人間は大昔から牛を身近な家畜として農耕に使ったり、牛の乳を飲んで栄養源としたり、牛のふんまで燃料あるいは建物の漆喰のひとつとして使ってきた。現在でもインドの田舎ではそれが続いている。人間には、日常生活を営む上で牛に頼って生きてきた歴史がある。だから、インド人は生活上の理由から牛を大切にしているのである。

 最後に宗教的には牛は神様ではなく、神様の乗り物であった。神様も牛の乳を飲んだり、バターを食べたりして牛の世話になった。信心深いインド人は、神様を大切にしているのである。

 インドの人口のおよそ82%はピンズー教徒で、菜食主義者(ベジタリアン)が多く、肉類、魚、卵などは食べない。私も「肉類は食べなくてよく大きくなりましたね」と言われるとき、「大きな力持ちのゾウさんも菜食でしょう」と返事することにしている。インドの人のタンパク源は、牛乳、豆、麦と新鮮な野菜である。

バクシ・プラモド(沖縄ツーリスト)

(琉球新報 2006-5-20)



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