北朝鮮からの核拡散


 北朝鮮が9日、核実験実施を発表したことにより、核物質・技術の移転阻止を目的とした核拡散防止条約(NPT)体制は大きく揺らいだ。加えて米国などが警戒するのは、北朝鮮から第三国やテロ組織などに核物質・技術が流出するという事態だ。「北朝鮮発」の核拡散は国際社会にとって深刻な問題となりかねない。

 「核物質の第三国移転にも米国は懸念を払うべきだ」北朝鮮の金桂冠外務次官は、先月訪朝した米国の朝鮮半島間題研究者セリグ・ハリソン氏に対し、核の移転を示唆したとも取れる発言をした。
 北朝鮮はこれまで、旧ソ連から研究炉の供与を受け、「核の闇市場」を構築したパキスタンのカーン博士からウラン濃縮に必要な遠心分離機本体や関連部品、設計図を入手したとされる。しかし核実験成功が事実とすると、今後は北朝鮮が「流出元」になる可能性が浮上してくる。

 ミサイル分野で北朝鮮はかつて、イランに短距離弾道ミザイル「スカッド」を大量に売却した。イランの中距離弾道ミサイル「シャハブ3」は、北朝鮮の「ノドン」の技術を基にしたとの見方が軍事専門家の間では有力だ。このほかにもミサイル輸出や技術提供相手国としてパキスタンやシリアが指摘されている。

 このルートを今度は核物質・技術が流れていくことは、米国にとっては容認できない事態。ブッシュ米大統領は9日の声明で「核技術を第三国やテロ組織に拡散すれば、米国への重大な脅威とみなされる」、と強く警告。拡散が確認された場合は「(北朝鮮は)全面的な責任を負うことになる」と述べ、断固たる対応を取る姿勢を示した。

 米国が9日、安保理各国に提示した対北朝鮮制裁決議案には、北朝鮮に出入りする船舶の臨検や大量破壊兵器用物資の禁輸が盛り込まれた。北朝鮮による核拡散の防止が、米政権にとって最優先の課題であることを示している。

(琉球新報 2006-10-11)



目次 トップ


inserted by FC2 system