ミャンマー、反軍政デモ


 ヤンゴン国際空港に続く6車線の幹線道路が群衆で埋め尽くされた。僧侶の読経が朗々と響く中、興奮した市民が「(民主化運動指導者の)アウン・サン・スー・チーさんを解放しろ」「政治犯を釈放しろ」と叫ぶ。ミャンマー軍政に抗議する僧侶らのデモは10万人規模に膨れ上がった。

 参加者の多くは静かに読経しながら行進。23日夜、デモを主導する若手僧侶グループはデモ参加を呼び掛けながらも「一切の政治的発言を控える」よう求める声明を発表した。軍政を刺激することを避けるための配慮だった。
 デモは意外に冷静で静かだ。しかし、迫力がある。長年にわたり圧政に耐えてきた市民の怒りを感じさせる。

 24日午後、ヤンゴン中心部の丘にあるシュエダゴン・パゴダ(仏塔)で読経を終えた僧侶は繁華街への行進を始めた。その多くは20代、30代の修行僧だ。中にはうら若い尼僧の姿も。沿道に詰め掛けた市民が大きな拍手で迎える。
 群衆にまじり、私服の治安部隊員や軍政協力者が、紙袋やバッグに隠したカメラでデモに声援を送る市民を隠し撮りしていた。

 「デモに加わりたい、でも怖い」。小声でそう語った若い女性は目に涙を浮かべながら手をたたいていた。建物に身を潜めるようにしてデモを眺めていたホテル従業員は「こんなのは初めてだ。とんでもないことが起こりそうな気がする」と不安そうに語った。

《ミャンマーの僧侶》
 人口約5000万人のうち9割が熱心な仏教徒で、僧侶は30万人以上といわれる。男性は一生に1回は仏門に入ることが義務付けられており、民衆の尊敬を集める。政治への関与は厳禁となっているが、実際には1988年の民主化運動で僧侶が先頭に立ち、ネ・ウィン独裁体制の崩壊につながった。

 このため軍事政権は仏教界を6宗派に大別し、宗教省管轄下で厳格なピラミッド組織を整備。現在は高位の僧侶ほど政権に近いとされる。今回のデモを行っているのは若い修行僧で、90年代に学生運動に加わった結果、就職もできず、仏門に入った若者も多いという。

(琉球新報 2007-9-25)



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