オバマ氏、初の黒人大統領か


 米民主党のバラク・オバマ上院議員〔45)が10日、次期大統領選への出馬をイリノイ州で正式表明した。聴衆をぐいぐいと引きつける演説はカリスマ性すら感じさせ、勝利が「現実的な初の黒人候補」(地元紙ジャーナル・レジスター〕と評される。従来の黒人候補と違うのは、黒人の権利を主張するのではなく、人種の枠を超えた「米国の融合」を訴える点だ。

《合衆国》
 「黒人の米国も、白人の米国も、ヒスパニックの米国も、アジア人の米国もない。あるのはアメリカ合衆国だ」
 2004年の民主党大会。無名の同州議会議員だったオバマ氏を一躍全国区にした基調講演で参加者は立ち上がって拍手を送った。
 それから2年半。オバマ氏は、奴隷解放と南北戦争で知られるリンカーン元大統領とゆかりの深い州都スプリングフィールドの旧州議会議事堂を、大統領選への出馬正式表明の場に選んだ。

 快晴の空の下、茶色の重厚な2階建ての上に星条旗がはためく旧議事堂をバックにオバマ氏は、元大統領が南北分裂をめぐり「分かれて争う家は立ちゆかない」と述べた有名な演説のフレーズを引用した。

《暗殺》
 これまでも黒人候補はいた。1988年の大統領選では黒人運動指導者ジェシー・ジャクソン師が民主党指名争いの最後まで残った。だが勝てなかった。コロンビア大のウォレン助教授は「結局、公民権運動の延長だった」と指摘する。広範な支持を得るには黒人であることを前面に出すだけでは難しい。

 黒人運動の出身でもないオバマ氏の場合、有力候補の一人が「たまたま黒人だった」(ニューヨーク大のナグラー教授)面がある。しかし、米国が「白人のキリスト教徒の国だと心から信じている人が多数いる」(ウォレン助教授)のも現実だ。
 ジャクソン師は米誌のインタビューで「(選挙中)暗殺の脅威は何度もあった」と述べた。96年の大統領選に出ていれば勝ったかもしれないといわれるパウエル前国務長官が出馬を見送ったのも、家族が身の安全を憂慮したためとされる。

《21世紀》
 「政府を(われわれの手に)取り戻そう。今ここで、今すぐに」
 10日、オバマ氏の演説に、会場を埋めた聴衆は「オバマコール」で応えた。大半が寒さに震えながら集まった白人だった。支持率でオバマ氏の前を走る民主党のヒラリー・クリントン上院議員も演説はうまいが、聴衆を引き込む力はオバマ氏が一枚上手の印象だ。

 演説後、黒人のアリントス・ハリバートンさん(32)は「大統領はふさわしい人がなればいい。21世紀の今、人種や性別を問題にする時代じゃないだろう」と話した。

(琉球新報 2007-2-12)



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