サブカルチャー外交


 「受賞された方々の活躍により、漫画が世界の懸け橋になるよう強く希望している」。麻生氏は7月2日、第1回国際漫画賞の授賞式でこうあいさつ。同賞は大の漫画好きで知られる麻生氏が発案し、アジア、欧米など26の国・地域から146作品が応募。受賞者は国際交流基金の招きで日本に10日間滞在、人気漫画家と面会したほか、「オタク文化の聖地」と言われる東京・秋葉原も見学した。

 日本の漫画、アニメなどの若者を中心とした世界への浸透は驚異的。世界でいち早く日本のアニメが紹介された国の一つとされるフランスでは、パリ郊外で7年前からほぼ年一度のペースで日本のサブカルチャーを集めた「ジャパンエキスポ」を開催。日本でもゲームの登場人物に扮する「コスプレ」の愛好家が集う「世界コスプレサミット」が今年で5回目を迎え、昨年から外務省が後援する熱の入れようだ。

 国際漫画賞を主催した外務省は、まずまずの反響に「日本の若者文化がまさに日本の情報発信の重要な手段となっている」と成果を強調。来年の日本ブラジル交流年に合わせたJポップ歌手派遣の企画や、世界的に人気のある漫画の主人公やキャラクターを「アニメ文化大使」に任命し、在外公館のイベントで活躍してもらうことも検討している。

 外務省が文化情報に力を入れる背景には、中国やインドといった国に注目が集まり、日本への関心が相対的に低下傾向にあるとの懸念がある。将来の知日派、親日派を戦略的に育てる上で「ジャパンイズクール」(日本はかっこいい)との印象をもたらした漫画やアニメは欠かせないというわけだ。

 外相の諮問機関「海外交流審議会」は6月、1−日本文化ボランティアの創設、2−日本の雑誌やDVDなどを気軽に体験できる海外拠点の新規展開ーなどを提言。外務省も2008年度予算の概要要求に盛り込む考えだ。
 その一方で提言は、今の状態について「いつまでも続くものとは限らない」として、日本文化に対するより広い関心を高めていく必要性を指摘した。折しも27日には内閣改造、自民党役員人事が予定される。外務省内には「漫画嫌いの大臣が就任したらどうなるのか」との声もささやかれている。

(琉球新報 2007-8-25)



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