戦争でうるおう米国経済を検証   宮田 律


 戦争がなくならないのはなぜか。米国を戦争に駆り立てる原動力は何かー。「不況になると戦争をする」「戦争は武器の在庫一掃セール」「石油のためのイラク戦争」などと言われることもある米国の戦争。軍部と軍需産業が結合した軍産複合体の危険性を指摘したのがアイゼンハワー元米大統領だった。
 
 「軍産複合体に依存した米国の経済構造が続けば、兵器を売るために、脅威と緊張をつくりだし、戦争とテロの連鎖はなくならない。その過程を検証したかった」と宮田律静岡県立大助教授。その成果を「軍産複合体のアメリカ」(青灯社)にまとめた。

 米国各地には軍需産業があり、農業に次いで政府からの補助金を受け取っているという。技術者や科学者の3分の1は軍事関連産業にかかわり、世界の兵器の40〜50%が米国製。米国の軍事費は世界全体の半分…と具体的な事実を示していく。石油資源の確保を狙う石油ロビーやイスラエルの安全保障のために働き掛けるユダヤロビーの動きについても記述する。

 ロッキード・マーティン、ボーイング、レイセオンといった軍需産業が兵器を製造。シュルツ元国務長官やチェイニー副大統領が経営にかかわる会社がイラクの復興事業を受注して批判を浴びた。

 専門のイスラム地域の政治および国際関係の知見を生かし、米国の量産複合体とイスラエルやイスラム諸国との関係を解き明かしている。「イスラム世界を訪れて接する市井の人々の素朴な笑顔を思い浮かべると、彼らを犠牲にして、米国経済をうるおすために、戦争をすることがいいことだとは思えません」

 「自由と民主主義」を掲げる米国の戦争だが、イラク情勢は泥沼化している。「人々の生活をめちゃくちゃにする戦争に合理性はない。戦争をしない方法を考えて、訴えていくのが研究者の使命だと思います」

(静岡県立大助教授)

(琉球新報 2007-1-31)



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