空幕長(田母神)論文……吹き出た「我流史観」



 「日本が侵略国家というのはぬれぎぬ」。航空自衛隊の田母神(たもがみ)俊雄航空幕僚長が論文で、過去の戦争を肯定する考えを発表していた。「我が国は日中戦争に引きずり込まれた被害者」とする独自の歴史観は、政府見解と大きく異なる。中国戦線の体験者は「事実を曲げた空想小説」と切り捨てた。

 田母神氏は31日午後11時前、自宅玄関先で報道陣のインタビューに短時間だけ応じた。論文を書いた真意や政府見解と異なる内容などについて問われ、「来週お話しさせていただきます」と繰り返した。内容について変更することはないかとただされると、「そうでしょうな」と答えた。

 更迭に至るまでの時間は早かった。この日の夜、地元の千葉県から急きょ東京・市谷の防衛省に戻った浜田防衛相は、午後10時に報道陣の取材に応じ、硬い表情で「不適切」と繰り返した。
 「政府見解と明らかに異なる意見を公にするのは、航空幕僚長としてふさわしくない」。田母神氏には電話で更迭を伝え、「『立場として問題では』と話した」という。

 田母神氏が論文を投稿したことは、空自内ではあまり知られていなかったようだ。この日の夕方、報道陣からの間い合わせを受けた関係職員らがあわてて確認。空自によると、「個人として」の投稿で、職務とは関係なかったが、防衛省官房長には事前に伝えられていたという。
 田毎神氏は防衛大卒業の「制服組」だ。71年に空自に入り、高射部隊を担当。その後は空幕防衛課業務計画班長や空幕装備部長、航空総隊司令官など主流を歩み、07年3月から空幕長に就いた。

 「猛将」タイプと言われ、ストレートな発言をすることで知られる。今年4月には、空自のイラクでの活動を違憲と判断した名古屋高裁の判決について、お笑い芸人の言葉を引いて「『そんなの関係ねえ』という状況だ」と記者会見で話し、物議をかもした。
 自衛隊の関係者によると、田母神氏は以前から論文に書かれたような歴史観を周囲に語ることがあった。数年前、研修で田母神氏の話を聞いたことがある自衛隊幹部は「バランスの問題はあるが、驚きはない」と話す。

 一方で「われわれ職員の一般的な考えとは違う。戦時中の日本がすべて正しいとは思わない。いろんな考えがあっていいとは思うが、柔軟なバランス感覚が必要だ」と違和感を語る防衛省幹部もいる。

空幕長論文の要旨
 田母神俊雄航空幕僚長の論文「日本は侵略国家であったのか」の要旨は次の通り。
 日本は朝鮮半島や中国大陸に一方的に軍を進めたことはない。日清戦争、日露戦争などによって国際法上合法的に中国大陸に権益を得て、これを守るために軍を配置した。我が国は蒋介石により日中戦争に引きずり込まれた被害者だ。

 日本政府と日本軍の努力で(満州や朝鮮半島の)現地の人々は圧政から解放され、生活水準も格段に向上した。日本はルーズベルトの仕掛けたわなにはまり真珠湾攻撃を決行した。
 大東亜戦争後、多くのアジア、アフリカ諸国が白入国家の支配から解放された。日露戦争、大東亜戦争を戦った日本の力によるものだ。

 東京裁判は戦争責任をすべて日本に押しつけようとした。そのマインドコントロールが今なお日本人を惑わせている。自衛隊は集団的自衛権も行使できない、武器の使用も制約が多い、攻撃的兵器の保有も禁止されている。がんじがらめで身動きできない。このマインドコントロールから解放されない限り、我が国を自らの力で守る体制がいつになっても完成しない。

 多くのアジア諸国が大東亜戦争を肯定的に評価していることを認識する必要がある。我が国が侵略国家だったなどというのはぬれぎぬである。

(2008-11-1 朝日新聞)



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