古代ユダヤ人は、パレスチナ人



 建国から60年を迎えたイスラエルで、建国の原動力である「シオニズム運動」の根拠を否定する著書がベストセラーとなっている。題名は「ユダヤ人はいつ、どうやって発明されたか」。

 シオニズム運動は、古代に世界各地へ離散したユダヤ人の子孫が「祖先の地」に帰還するというもの。著者はユダヤ人でテルアビブ大学のシェロモ・サンド教授(61)=歴史学。著書では、今のユダヤ人の祖先は別の地域でユダヤ教に改宗した人々で、古代ユダヤ入の子孫はパレスチナ人だ……との説が記されている。

 サンド教授は「ユダヤ人は民族や人種ではなく、宗教だけが共通点」と指摘。第2次世界大戦中に約600万のユダヤ人を虐殺したナチス・ドイツが、ユダヤ人は民族や人種との誤解を広めたとする。「パレスチナ人を含むすべての市民に平等な権利を与える民主国家を目指すべきだ」というのが著者の最大の主張だ。

 シオニズム運動の根拠になったのは、ユダヤ人が紀元後2世紀までにローマ帝国に征服され、追放されたという「通説」だった。これに対し、教授は「追放を記録した信頼できる文献はない。19世紀にユダヤ人の歴史家たちが作った神話だった」との見解だ。

(2008-6-1 朝日新聞)



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