自作自演暴露に波紋…捕鯨船衝突のSS元船長



 米国の反捕鯨団体シー・シェパード(SS)の元メンバーで、日本の調査捕鯨船に侵入し東京地裁から執行猶予付き有罪判決を受けた小型高速船元船長ピーター・ベスーン氏(45)が、1月に捕鯨船と衝突し大破した高速船の沈没は、「自作自演」だったと暴露した。11月に始まる捕鯨シーズン直前に露呈した内輪もめに、反捕鯨感情が強いオーストラリアやニュージーランドでも波紋が広がっている。

 「SSのポール・ワトソン代表の指示だった」。ベスーン氏は10月初め、強制送還で帰国した母国ニュージーランドのラジオで証言した。SS側は発生当初、日本船が故意に衝突し、救難もしなかったと日本側を非難していた。だが大破した高速船は引航可能だったのに、世論の同情を集めるため、ワトソン氏の指示で故意に沈めだというのだ。

 ベスーン氏は朝日新聞の電話取材に「沈没の件はワトソン氏に口止めされたが、反捕鯨を理由に不誠実になりたくなかった」と暴露の理由を説明。公判時にSSを除名されたことなどワトソン氏への不満をぷちまけ、激しい確執があったことを明らかにした。
 一方のSSはベスーン氏の証言を事実無根だと否定し、真相は闇の中だ。反捕鯨世論が根強い両国には「内輪もめは日本の捕鯨を利するだけにとの声がある一方、過激な暴力に走って内紛に揺れるSSの姿を「偽善だ」として、批判する意見も目立っている。

 ベスーン氏は「反捕鯨活動をしたのは正しかった。逮捕されたことも、後悔していない」と、今後も反捕鯨活動を続ける可能性を示唆。SSも新たな抗議船を導入し、12月初めから計3隻態勢で抗議活動を再開する方針だ。
 SSの「暗部」を目の当たりにした市民が今シーズン、抗議活動にどんな視線を送るのか。日本に調査捕鯨中止を求める両国政府も、世論の動きを慎重に見守っている。

(朝日新聞 2010-11-3)



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