村上春樹氏、日本の原発を批判



 村上春樹氏は満を持してから心の内を明かすようだ。
 
 3月11日に東日本大震災が発生して以来この3カ月、日本の芸術界では既に多くの著名人が意見を表明し、その多くが原子力発電に依存する日本の実態を批判してきたが、現代の日本作家として最も有名な村上春樹氏は沈黙を守ってきた。だがそれもこれまでの話だ。

 村上氏は6月9日、バルセロナのカタルーニャ自治州政府が「世界の人文科学分野」で功績のある人物に贈る国際賞の受賞スピーチで意見をはっきりと述べた。カタルーニャ国際賞を受賞した同氏は、福島第1原発事故は、第二次世界大戦中に投下された原子爆弾に続き、日本が体験する2度目の核の被害であるが、今回は日本人自身が引き起こしたもので、決して起こってはならなかったものだと述べた。

 共同通信によると、村上氏は、「福島第1原発の事故は日本にとって2度目の大きな核の被害だが、今回は誰かに爆弾を落とされたわけではなく、自らの手で過ちを犯した」との見方を示した。
 また、同氏は、カタルーニャ国際賞の副賞である8万ユーロ(約930万円)の賞金を、東北復興のため寄付した。

 同氏は、被爆国である日本は原子力発電を拒否すべきであったと主張した。
 共同通信によると、同氏は「原発に疑問を持つ人々は、『非現実的な夢想家』として退けられた」と批判した。将来のノーベル賞作家候補として評判の高い同氏のこうしたコメントは、芸術界の多くの著名人がこれまで表明してきた考えに沿ったものだ。

 ノーベル文学賞受賞作家である大江健三郎大江健三郎氏は、東日本大震災の翌週に、「広島の犠牲者の記憶を裏切ってはならない」と述べている。仏ルモンド紙とのインタビューで大江氏は、日本は原子力技術を使ったことの結果を直視する必要があるとし、「核の炎を経験した日本人は、核エネルギーを産業効率の観点で考えるべきではない。広島の悲劇を基に成長の手段を追求すべきではない」との見解を示した。

 原子力発電に対する批判とは別に、村上氏は、自然災害を受け入れて生活することに慣れている日本国民は、再建し、復興に向けて立ち上がることができると確信していると述べた。「夢を見ることを恐れてはいけない。力強い足取りで前に進んでいく『非現実的な夢想家』でなくてはならない」と村上氏は言う。
(記者:Kenneth Maxwell)

(WEB:JAPAN REAL TIME 2011-6-11)



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