コーラン焼却、アフガン反米デモ拡大



 オバマ米政権が、アフガニスタンでの米軍によるコーラン焼却事件の対応に苦慮している。オバマ大統領は事態収拾を狙って謝罪したが、アフガンでの反米運動は沈静化せず、米軍人も相次いで殺害された。米国内では野党共和党から批判の声も出始めた。
 オバマ政権は現在9万人の駐留米軍を、今年秋には6万8千人に減らす計画で、アフガンの治安回復を急いでいる。事件を巡って、すでにオバマ氏、パネッタ米国防長官、デンプシー米統合参謀本部議長らがそろってアフガン政府に謝罪を表明した。

 しかし、反米を掲げたデモなどは続き、25日には厳戒態勢のしかれた首都カブールの内務省で国際治安支援部隊(ISAF)所属の米士官2人が射殺される事件が発生。米兵は23日にも2人殺害されており、米軍主体のISAFは、各省庁に駐在する兵士を一斉に退去させる処置を取った。
 こうした事態を受けて、パネッタ氏は25日、アフガンのワルダク国防相と電話。弔意を示したワルダク氏に対し、ISAFを保護するために、断固とした対応を取るよう要請した。

 一方、米兵らが殺害されるなか、オバマ氏が謝罪したことに批判が出ている。大統領選の共和党候補の指名争いをするギングリッチ元下院議長は「オバマ氏は米大統領の謝罪に値しない人々にいつも謝っている」と指摘。カルサイ政権が米兵射殺について謝罪しない場合は「アフガンに別れを告げるべきだ」とし、駐留米軍の早期撤退を促した。

 事態収拾でカルザイ政権頼みの格好になった米政府は、次に打つ手も見えていないようだ。ホワイトハウスは25日、カルザイ政権が国民に平静を呼びかけたことを歓迎する、などと発表するにとどめた。

【コーラン焼却事件】
 カブール北東のバグラム米空軍基地内で20日夜、イスラム教の聖典コーランが焼かれた。複数の米兵がコーランなどイスラム教に関する書籍を燃やしているのに、アフガン人職員が気付いたのが発端。駐留米軍側は、誤って焼却した、と釈明している。

(朝日新聞 2012-2-27)



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