新法王はアルゼンチン人「フランシスコ1世」名乗る





■新法王に選出
 ローマ法王庁(バチカン)は13日夜(日本時間14日未明)、ベネディクト16世の退位に伴う法王選出会議「コンクラーベ」で、アルゼンチン人でブエノスアイレス大司教のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(76)を、266代目の新法王に選出した。法王名は「フランシスコ1世」を名乗る。約2千年のカトリックの歴史で、初の米州大陸出身の法王となる。イエズス会出身の初の法王でもある。 

 午後7時すぎ、システィーナ礼拝堂の煙突から新法王選出を表す白い煙が上がり、サンピエトロ大聖堂の鐘が打ち鳴らされた。約1時間後、「ハベムス・パパム(法王を得た)」というラテン語の決まり文句とともに、ベルゴリオ枢機卿の名が告げられた。 
 真新しい白い法服に身を包んだ新法王は、初のスピーチを「歓待をありがとう。こんばんは」と切り出し、「聖職者と皆さんで、ともに友愛の道を歩み始めましょう」と述べた。新法王はその後、前法王と電話で話し、翌日中にも会う約束を交わしたという。 

 コンクラーベには、教会で法王に次ぐ地位の枢機卿のうち80歳未満の115人が参加し、外界と遮断された状態で12日午後から始まった。5回目の投票で決まった。ベルゴリオ枢機卿は、法王庁中枢の保守的な「官僚派」と、改革を目指す「現場派」がどちらも多数を得られなかった時に、両者が折り合える「第三の候補」と目されていた。 

 新法王は、前法王ベネディクト16世の存命中の退位という約600年ぶりの異例の事態を受けて選出された。世界に約11億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会は、欧米での教会離れや聖職者による性的虐待問題、内部文書流出事件など様々な問題を抱えている。新法王は就任早々、難題に向き合うことになる。 
 日本のカトリック中央協議会は、新しく選出された266代法王の日本語表記を「フランシスコ1世」とすることに決めた。

■一貫して貧困対策に力注ぐ 
 新法王フランシスコ1世は1936年12月、ブエノスアイレスで生まれた。イタリア紙によると、父母ともイタリア北部ピエモンテ州からの移民だ。首都近郊サンミゲルの神学校で学び、イエズス会に加わった。神学教師を務めた後、98年、ブエノスアイレス大司教に就任。アルゼンチンの司教協議会の会長も務めた。 

 一貫して貧困対策に力を注いできた。2001年に枢機卿に任命された際には、多くの信者が式典を見にバチカンを訪れようとしたのを制し、「お金は貧しい人のために使って」と諭した。日頃の移動には地下鉄やバスを使う庶民派だ。 
 人権団体などからは、多くの犠牲者を出した70〜80年代の軍政との密接な関わりが批判されている。一方で本人は、多くの人を教会で保護し、軍政から救ったと語っている。

 ANSA通信などによると、サッカーとタンゴを愛し、聖職に就く前はダンス仲間の恋人もいたという。

(朝日新聞デジタル 2013-3-13) 



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