歴史戦 産経新聞社(産経新聞出版)



 これはまさに「戦争」なのだ。主敵は中国、戦場はアメリカである。中韓両国が日本に突きつける歴史問題の本質を「産経新聞」はそう喝破し本書にまとめた。
 中韓両国は捏造情報で日本を完膚なきまでに貶め信頼失墜をはかる。日米離反と日本の孤立が最終目標だ。

 中国共産党政府と抗日連合が主導する在米中華勢力は、豊富な資金力と巧みな戦略で反日世論の浸透をはかる。アメリカの司法および行政が慰安婦問題はすべて複数の国際条約によって解決済みとの最終判断を示すと、彼らは直ちに次なるターゲットを立法府に絞った。
 票と献金が結果を左右し得る選挙区や議員らを標的にした運動は、次々に成功をおさめつつある。

 左派系団体の暗躍の場と言ってよい国連人権委員会でも、彼らは河野談話や吉田清治証言を巧みに活用して日本包囲網を構築した。
 日本は外務省も政府もその時、その場できちんと反論してこなかった。それだけでなく、国際社会の左派陣営に反日の歴史材料を与えてきたのもおよそいつも日本人である。 反論しないだけでなく、逆に祖国を貶めることを正義と考える人々の暗躍する国−日本こそ中国にとって格好の餌食であろう。

 それでなくとも中国は謀略の国だ。彼らは民族興亡の血塗られた歴史を繰り返してきた。その国柄の酷薄さと苛烈さゆえに、庶民に至るまで生き残りのために謀略の才を磨かざるを得なかった。
 対照的に異民族との交流が比較的少なく、穏やかな文明を育んだ日本人の情報や謀略に対する理解は極めて表層的だ。
 戦後は情報も含めてアメリカに頼りきり、自らを護ることを忘れた。いま最大の危機に直面する理由は私たちの中にある。

 それでも敗北するわけにはいかない。官民の力を合わせてこの不条理な戦争に勝たなければならない。その第一歩として、日本人全員に読んでほしいのが本書である。
(櫻井よしこ:ジャーナリスト)

(産経新聞 2014-11-9)



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