アンジー監督作品「反日あおる」



 米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが監督を務める映画「アンブロークン(原題)」をめぐり、配給元の米大手映画会社、ユニバーサル・ピクチャーズが日本と中国での公開について頭を悩ませているもようだ。ロサンゼルス・タイムズ紙が報した。映画は全米で25日から公開されるが、主役の米兵を日本兵が再三虐待する場面があり、日本では抵抗感が強く、中国では反日感情をあおりかねないためだ。

 映画は先の大戦で、日本軍の捕虜となった元五輪選手の米軍機の爆撃手、ルイス・ザンペリーニ氏の半生を描いている。すでに北米や欧州、豪州では公開が決まっているが、世界2位の映画市場である中国と3位の日本で公開されるかどうかは未定だ。
 ザンペリーニ氏は1936年のベルリン五輪の陸上5000mに出場し、8位に入った。後半の力走が観戦中のナチス・ドイツのヒトラー総統の目にとまり、競技後、握手を交わしたという逸話もある。

 戦時中、搭乗した爆撃機が太平洋上に不時着。47日間漂流した後、旧日本軍に発見されて捕虜となった.収容所の看守に目をつけられ、繰り返し虐待を受けたとされる。終戦によりロサンゼルス郡トーランス市に戻ったザンペリーニ氏は故郷の英雄に。98年の長野五輪では聖火ランナーも務めた。今年7月2日、肺炎のため97歳で死去した。

 映画の予告編で、日本兵による虐待シーンがあることは確認されているが、さらに問題視されているのはベストセラー作家、ローラ・ビレンブランド氏の原作で、「捕虜たちが焼かれたり、人体実験で殺された」などと握造されたストーリーが史実のように描写されていることだ。「映画にそうしたシーンがあれば、中韓が政治的に利用しかねない」と懸念する在米日本人もいる。

 ユニバーサル社が、日本での公開を案じる背景はそこにある.同社幹部はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に、「映画は『希望と立ち直る力』を表現している。強調したかったのは人間の精神力であり、日本軍の捕虜への行為ではない」と説明している。

 一方、中国では反日映画やテレビドラマが人気で、2012年だけで200以上の作品が制作された。01年に日本でも公開されたマイケル・ベイ監督の「パールハーバー」など、先の大戦を扱ったハリウッド映画はいずれも好調だった。原作の「アンブロークン」も中国語に翻訳されており、映画も相当の売り上けが見込めそうだ.
 だが、ユニバーサル社側は、「(中国で公開することで)反日感情をあおっているとみられるのは本意でない」としている。

(産経新聞 2014-12-6)



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