2015年、暴走する世界経済と日本の命運 三橋貴明(徳間書店)



 2014年は、ウクライナ間題での米露対立、欧州での反ユーロ派の台頭、イスラム国の勢力拡大、スコットランドやスペインでの独立運動、香港や台湾での反中国デモなど、世界で対立と分裂が激化した年でした。
 グローバル化により世界が緊密になりつつあるはずの現在、なぜこのような争乱が各地で起きているのか。

 本書は、その原因はまさにグローバリズムにこそあると喝破します。アメリカが拡散したグローバリズムによってアメリカ自身が没落し、世界で新たな対立を生み出した構図や、グローバリズムと対をなす新自由主義、財政均衡主義が世界を混乱に陥れている状況をわかりやすく解説。

 日本でもその影響は大きく、財政均衡主義により消費税増税が強行された結果、大幅な景気後退を招き、実質賃金も下落し続けている実態を明らかにしています。
 来年の消費税10%への再増税は延期されましたが、景気対策として各種の「規制緩和」が唱えられています。しかし著者は、規制緩和も新自由主義に基づく政策であり、消費増税同様、日本をさらなるデフレにたたきこむ最悪の政策であると警告します。

 さらにグローバリズムにより各国で民主主義が壊れつつある現状を指摘、そのうえで2015年に日本と世界に起こる大きな変化を予測しています。
 解散・総選挙でアベノミクスの真価が間われているいま、今後の日本を考える上で必読の一冊です。

 (明石直彦:徳間書店一般書籍編集部)

(産経新聞 2014-12-6)



目次   


inserted by FC2 system