アンネ本破損事件



 世界の反ユダヤ活動の監視を続ける米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・ロサンゼルス)のエイブラハム・クーパー副代表は2月27日未明、「アンネの日記」連続破損事件について「思想的な動機があるのは明白だ」と語った。日本の「インターネット上の過激派」にも懸念を示した。

 朝日新聞のインタビューに応じた。「アンネの日記は日本で愛されてきた。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)をめぐる議論はあっても、その象徴を狙うのは新しい現象で、世界でも聞いたことがない。極めて衝撃的だ」と述べた。
 犯行について「計画的だ。明らかに組織的で、何らかの思想的な動機がある」とした。「アンネの日記が世に出た時、人種差別主義者やネオナチは作り話と言いたがった」と指摘。「今回の犯人はある意味、同じことをしようとしている」と述べた。

 欧州の現状として「第2次世界大戦以降見られなかったほどの反ユダヤ主義が再び吹き荒れている」と述べた。
 ネットでは「日本人の犯行であるはずがない」という主張も出回っている。「我々は他の誰かのせいにしたがる。ヘイトクライム(憎悪犯罪)は米カリフォルニアでも年間1500件以上起き、特定地域の現象ではない。日本にもネットの過激派や、ナチス崇拝者がいる」と述べた。

 一方、日本の対応について「人々は衝撃を感じ、図書館は本を守る措置をとり、政府は声明を出し、捜査本部も立ち上がった。ヘイトクライムの狙いは対象の孤立・弱体化だが、団結というよい効果が生まれた」とも評価した。
 センターは来年、ホロコーストやアンネ・フランクの展示を東京と広島で計画中だ。「若い世代が学ぶ機会となるよう、日本との協力の道を探る」と述べた。

(朝日新聞 2014-3-1)



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