ローマ法王とロシア正教会総主教が歴史的初会談



 ローマ・カトリック教会の頂点に立つローマ法王フランシスコとロシア正教会の最高位キリル総主教が12日、キューバの首都ハバナの国際空港で会談した。1054年のキリスト教会の東西分裂以来、ローマ法王と、東方正教会で最大の勢力を誇るロシア正教会トップの会談は初めて。
 両者は中東の過激派組織「イスラム国」(IS)を念頭に、イラクやシリアで迫害を受けるキリスト教徒の保護のために連携し、暴力やテロ撲滅に向け国際社会に行動を求める共同宣言に署名。東西教会の歴史的な和解をアピールした。

 東西のキリスト教会の境界線に位置するウクライナでの布教をめぐる争いが双方の最大の対立点だった。カトリック側がロシア正教会のウクライナ管轄権を共同宣言に盛り込むことに同意し、和解が実現した。信者の数で上回るカトリック側が事実上譲歩した形。ISの台頭などに共同で対処するため、大局的な判断を下したとみられる。
 両氏は、中東やアフリカなどでイスラム過激派の暴力の犠牲となっているキリスト教徒の保護や、道徳や家族の価値観崩壊の危機などキリスト教会が近年抱える問題を議論。共通の課題に協力して対処することを確認した。

 会談冒頭、両氏は笑顔で会話を交わした。法王は「会談の成果は大きいと期待している」と語り、総主教も、新たな会談を妨げる「障害」は既にないとして、対話継続に前向きな姿勢を示した。

 ◆ロシア正教会 東方正教会の中で最大勢力を誇る中心的教会。キエフ・ロシアが10世紀末にギリシャ正教を受け入れたのが起源で、ロシアで推定7500万人の信者を持つ。1054年にキリスト教会が東西に分裂して以来、カトリック教会との融和を拒んできた。宗教を否定したソ連時代には弾圧されていたが、ソ連崩壊後のロシアで急速に勢力を回復。プーチン大統領が熱心な信者であることから政権との関係を深めている。

 ◆ローマ法王庁(バチカン)とロシア正教会の和解の動きは次の通り。
 1989年12月 ゴルバチョフ書記長がローマ法王ヨハネ・パウロ2世とソ連最高指導者として初会談
 1991・12 ソ連消滅
 1997・6 ロシア正教会の総主教アレクシー2世とヨハネ・パウロ2世の会談が調整されたが中止
 2000・6 ロシアのプーチン大統領がヨハネ・パウロ2世と会談
 2005・4 ヨハネ・パウロ2世死去、新法王はベネディクト16世に
 2008・12 アレクシー2世死去
 2009・1 ロシア正教会がキリル渉外局長を総主教に選出
 2009・12 ロシアのメドベージェフ大統領がベネディクト16世と会談
 2013・2〜3 ベネディクト16世退位、新法王はフランシスコに
 2013・11 プーチン大統領が法王フランシスコと会談
 2016・2・12 法王フランシスコとキリル総主教がキューバで初会談

(日刊スポーツweb 2016-2-13)



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