沖縄のユニークな神様 




 沖縄には様々な奇祭があり、そこにユニークな神様が登場する。神には、いつも人々のそばいる神と、よそからやって来る神がある。「来訪神」は、よそからやって来る神のことで、その神々はこの世ならぬ「異形」の姿をしている。

■ミルク
 八重山や本島南部には、ミルク神が子どもなどの行列を従えて練り歩く行事がある。那覇市首里には「赤田のミルクウンケー」がお盆の時期に開催される。ミルクというのは、弥勒菩薩(みろくぼさつ)の沖縄での呼び名。弥勒菩薩は、お釈迦様の滅後56億7000万年後に出現し人々を救済する未来仏。沖縄では、弥勒菩薩がニライカナイという海の彼方の理想郷からやってきて、五穀豊穣や子孫繁栄をもたらすという信仰がある。
 ミルク神の白く大きな仮面は、七福神の布袋(ほてい)様のような顔をしているが、これは、布袋様を弥勒菩薩の化身とする中国南部やインドシナ半島の影響であると考えられている。

■オホホ
 旧暦10月頃、西表島の祖内集落と干立集落で節祭(シチ)が開催される。今年の豊作に感謝し、来年の実りを祈る祭事である。オホホはこの節祭に干立集落のみに登場する仮面神。白い異人風の面をつけた出で立ちで、「オホホ、オホホ」と奇声をあげながら、ひょうきんなしぐさで人々の笑いを誘う。ミルク神とは対極の存在とされており、見物人の女性や子どもにちょっかいを出したり、札束をチラつかせて人の関心を引こうとしたりする道化役だ。

■ダートゥーダー
 小浜島で旧暦8月の結願祭の時に行われる芸能で、ひときわ変わったお面の芸である。高い鼻の黒いお面、金太郎のような前掛けを着けた4人のダートゥーダーが『フッ』という声で飛んだり、組み体操のようなコミカルな動きをしたり、見る人を引きつける。この芸能はしばらく途絶えていたが、2001年の結願祭で75年ぶりに復活した。
 熊野のカラス天狗(てんぐ)がルーツとも言われる。山岳信仰の修験者(山にこもり厳しい修行を行う)の遊行芸として、全国で邪を払い、福を招いてきたものが、島に伝わった。

■パーントゥ
 宮古島で行われている悪霊払いの行事。平良島尻地区のパーントゥ祭りは正式には「パーントゥ・プナハ」といい、毎年旧暦9月の上旬に開催される。3人の青年がパーントゥに選ばれ、仮面をかぶってシイノキカズラというツル植物をまとい、さらに全身に泥を塗る。この泥は「ンマリガー」(産まれ泉)と呼ばれる特別な泉から採取する、神聖な泥だという。
 パーントゥとは、「パーン」(食べる)と「ピトゥ」(人)という単語が訛って生まれた言葉だといわれ、宮古島の方言で鬼や妖怪などを意味する。しかし、パーントゥ祭りではパーントゥは厄払いの神とされ、泥を塗りつけることで人々の無病息災を祈願する。

■マユンガナシ
 石垣島川平(かびら)で旧暦9月頃の戊戌(つちのえいぬ)の日の夜、マユンガナシの祭祀をする。杖を手に、蓑と久葉(くば)笠を着けて覆面をした戌年(いぬどし)生まれの青年2人が、海の彼方から来たマユンガナシに扮して家々を回る。そして、五穀の栽培方法を教え、家々を祝福する。
 マユンは真世(マユ、豊饒の世界)、カナシは敬称。つまり「マユの神様」という意味。

■アンガマ
 八重山の芸能のひとつ。お盆に行なうのを「ソーロンアンガマ」という。あの世からやって来るウシュマイ(お爺)とウミー(お婆)が家々を訪れて、仏壇を拝み、花子(ファーマー)と呼ぶ孫たちとともに踊って唄う。その後、あの世のしきたりや生活について頓智を利かせた問答を繰り広げる。裏声で交わされる八重山方言のやり取りが見物人を楽しませる。

■フサマラー
 波照間島に伝わる神である。「フサ」は草、「マラー」は稀に訪れてくる人を意味すると言われる。旧暦7月14日、お盆の中日に開催される「ムシャーマ」(豊年祈願と祖先供養を目的とした祭事)に登場する南方からの来訪神である。
 元々は雨乞いの神であったといわれる。雨乞いの祭り「アミニゲー」(雨願い)に登場し、御獄(祭祀を行う場所)で雨乞いの神歌を歌った。

■チョンダラー
 京太郎(チャンダラー、チョンダラー)は、沖縄の伝統芸能のひとつ。来訪神ではないが、道化役として祭りに登場する。地域によってはコッケイ、サンダー(三郎)、ナカワチ、チョーギナーなどとも呼ばれる。古くから琉球には京太郎と称される門付け芸があり、祝福芸、念仏踊り、人形芝居などを演じていた。
 現代のエイサーでは、顔を白塗りにして滑稽なしぐさで場を盛り上げながら、隊列の整理をする役割がある。本来はサナジャー(ふんどし姿の意)と呼ばれたという。         



(2020)

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