ジャイナ教

南インドの聖地シュラバナベルゴラ


1.概略
 ジャイナ教は紀元前5世紀頃、マハービーラ(偉大な英雄という意味、釈迦と同時代の人)が創始した宗教で、中インドのマガダ国を中心に活動しました。
 ジャイナ教は正しくは「ジナ教」といい、ジナとは勝利者、煩悩に打ち勝った解脱者のこと。仏教とともにバラモン教の伝統と権威を認めない非カースト的宗教として成立しましたが、厳しい戒律のためインドの民俗宗教に留まっています。信徒数は約393万人(1994年)。

2.教祖・重要人物
「マハービーラ」(バルダマーナ 前444〜372)
 マハービーラは紀元前5世紀、ヴァイシャリーの近郊で武士階級の一家に生まれました。結婚し長女をもうけましたが、両親の死後、財産を処分して出家します。裸行による修業を実践したあと、12年以上におよぶ遊行(行脚)生活を送り、悟りを得たとされます。
 マガダ国の首都ラージャグリハを中心に教えを広め、多くの信者を獲得しました。そして、72才でこの世を去りました。

3.教典

4.教義・戒律
 ヒンズー教や仏教と同じく「業」による輪廻を説きます。霊魂に付着している物質(業物質)が解脱を達成して除去されたときは、輪廻の束縛を離れて理想世界に安住することができます。業の束縛から解き放たれ悟りに達するために、苦行が重視され、戒律を守ることが重要視されています。
 根本戒律は「不殺生」「不妄語」「不盗」「不淫」「無所有」の五戒です。
 特に「不殺生」は徹底していて、楊枝をを使わない(虫歯の虫を殺さない)、泉から直接に水を飲まない(プランクトンや虫の卵を殺さない)、マスクをつける(羽虫やウイルスを殺さない)、道を歩くときは蟻やその他の生き物を踏みつけないように箒(ほうき)ではきながら歩く、といいます。

 「無所有」は物に執着しないということで、究極的には最後の所有物である自分の身体でさえも、断食によって捨てることが尊いとされています。
 ジャイナ教はインドにバラモン教が定着する以前にあった出家主義の宗教がのちに発達したもので、仏教と兄弟のような特徴をもっています。しかし、特定の絶対者や神々、またそれによる救済は認めません。

5.宗教行事・祭礼
「マハービーラ・シャヤンティ」
 マハービーラの誕生を祝う祭り(3月から4月)。
 
6.宗教生活・礼拝方法
 ジャイナ教も仏教と同様に人生を苦とみるが、解脱のために禁欲と厳しい苦行を重視し、厳格な不殺生主義を唱えます。そのためジャイナ教徒は菜食主義者で、商業や金融業に従事するものが多いといわれます。

7.象徴(像・シンボル)

8.歴史
 ジャイナ教は徹底した出家主義をとったためインド国内に留まりましたが、滅びることなくインド社会に影響を与えています。
 
9.宗派
 開祖マハービーラは裸で過ごしたとされるが、ここから「裸形派」と「白衣派」が派生した(2世紀頃)。「白衣派」は、教典の存在、女性の解脱、白衣の着衣、最高解脱者の摂食などを認めているが、「裸形派」はこれらすべてを否定します。

10.その他
「マハトマ・ガンジー」
 無抵抗主義で有名なマハトマ・ガンジーは、ジャイナ教徒です。


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