仏 教
7.象徴(像・シンボル)
初期仏教では、具体的に礼拝する対象はシンボル(菩提樹や仏足石、金剛座)で間接的に表現していたが、ギリシャ・ローマの彫刻の文明の影響もあり、紀元1世紀頃にガンダーラ(現在のパキスタン北部)で直接的に人間の形の仏像が製作されるようになり、前後してマトゥラー(インド)でも仏像造立が開始された。
仏像造立開始の契機については諸説あるが、一般的には釈迦亡き後の追慕の念から信仰の拠りどころとして発達したと考えられている。仏像の本義は仏陀、すなわち釈迦の像であるが、現在は如来・菩薩・明王・天部など、さまざまな礼拝対象がある。
■仏、如来
如来とは「目覚めた者」「真理に到達した者」の意。悟りを開いた存在。仏陀や世尊と同じく、仏の尊称。
歴史上に実在した仏は釈迦(釈迦如来)だけで、阿弥陀仏(あみだぶつ)とか薬師如来(やくしにょらい)といわれる本尊は、後代になって教典のなかに現れてきた仏。
釈迦如来(世界を正しく導く)
薬師如来(病や災いを取り除く仏、左手に薬壺をもっている)
大日如来(万物を照らす宇宙的存在)
■菩薩
「菩薩」とは悟りを開いた人のことで、本来なら自動的に仏になるところを、仏になるのは延期して、まず衆生を救おうと、大衆の世話をしている存在。それぞれの菩薩によって役割が決められている。菩薩が人々を助ける行いを利他業・菩薩業というが、大乗仏教になってから生まれた。これが仏教が世界宗教になった理由ともいえる。
普賢菩薩(仏の教化を助ける)
文殊菩薩(知恵を与える)
観世音菩薩(大きな慈愛で民を救済する)
勢至菩薩(知恵の光で悪を離れさせる)
月光菩薩(薬師如来の補助)
日光菩薩(薬師如来の補助)
■明王
明王は密教に説かれた仏で、救いがたい衆生を救済するため憤怒の形相をしている。
不動明王、孔雀明王、愛染明王など
■天部
護法善神。インドの在来の神々が仏教に取り入れられ、仏を守護する役目をもたされた。四天王、毘沙門天(四天王の一である多聞天に同じ)、吉祥天、大黒天、弁才天、梵天、帝釈天など。
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