仏 教

11.その他  
「釈迦十大弟子」
 釈迦の10人の主要な弟子のこと。経典によって誰が十大弟子に入るかは異なるが、維摩経では以下の通りである。

(1)サーリプッタ 舎利弗 (しゃりほつ)
 舎利子とも書く。智慧第一。『般若心経 』では仏の説法の相手として登場。
(2)マハーモッガラーナ 摩訶目連 (まかもっけんれん)
 一般に目連と呼ばれ、神通第一。舎利弗とともに懐疑論者サンジャヤ・ベーラッティプッタの弟子であったが、ともに仏弟子となった。目連が餓鬼道に落ちた母を救うために行った供養が『盂蘭盆会 』(うらぼんえ)の起源だと中国仏教ではしている。

(3)マハーカッサパ 摩訶迦葉 (まかかしょう)
 頭陀(ずだ) 第一。釈迦の死後その教団を統率し、500 人の仲間とともに釈迦の教法を編集し(第一結集)、付法蔵 (教えの奥義を直伝すること) の第一祖となった。
(4)スブーティ 須菩提 (しゅぼだい)
 解空第一。空を説く大乗経典にしばしば登場する。西遊記では、なぜか孫悟空の師匠として登場している。

(5)プールナマイトラーヤニープトラ 富楼那弥多羅尼子 (ふるなみたらにし)
 略称として「富楼那」。他の弟子より説法が優れていた。説法第一。
(6)マハーカッチャーナ 摩訶迦旃延 (まかかせんねん)
 論議第一。辺地では5人の師しかいなくても授戒する許可を仏から得た。

(7)アニルッダ 阿那律 (あなりつ)
 天眼第一。釈迦の従弟で阿難とともに出家した。仏の前で居眠りして叱責をうけ、眠らぬ誓いをたて、視力を失ったがそのためかえって真理を見る眼をえた。
(8)ウパーリ 優波離 (うぱり)
 持律第一。もと理髪師で、階級制度を否定する釈迦により、出家した順序にしたがって、貴族出身の比丘の兄弟子とされた。第一結集においては、彼の記憶に基づいて戒律が編纂された。

(9)ラーフラ 羅?羅 (らごら)
 羅云とも書かれる。密行第一。釈迦の息子。釈迦の帰郷に際し出家して最初の沙弥(少年僧) となる。そこから、日本では寺院の子弟のことを仏教用語で羅子(らご)と言う。
(10)アーナンダ 阿難 (あなん)
 多聞第一。釈迦の従弟。阿難陀とも書く。nandaは歓喜という意味がある。出家して以来、釈迦が死ぬまで25年間、釈迦の世話をした。第一結集のとき、彼の記憶に基づいて経が編纂された。120歳まで生きたという。

「龍樹」
 龍樹(りゅうじゅ)は、2世紀に生まれたインド仏教の僧である。「龍樹」とは、サンスクリットの「ナーガールジュナ」の漢訳名で、日本では漢訳名を用いることが多い。
 大乗仏教中観派の祖であり、日本では、八宗の祖師と称される。また真言宗では、真言八祖の1人であり、浄土真宗の七高僧の第一祖とされ「龍樹菩薩」、「龍樹大士」と尊称される。密教系の仏教では「龍猛」(りゅうみょう)と呼ばれることもある。

 南インドのビダルバの出身のバラモンと伝えられ、幼い頃から多くの学問に通じた。サータヴァーハナ朝の保護の下でセイロン、カシミール、ガンダーラ、中国などからの僧侶のために院を設けた。この地(古都ハイデラバードの東70km)は後にナーガールジュナ・コーンダ(丘)と呼ばれる。

 当時、勃興していた大乗仏教運動を体系化したともいわれる。ことに大乗仏教の基盤となる『般若経』で強調された「空」を、無自性に基礎を置いた「空」であると論じて釈迦の縁起を説明し、後の大乗系仏教全般に決定的影響を与える。このことにより龍樹は「大乗八宗の祖」として仰がれている。

 彼の教えは、鳩摩羅什によって中国に伝えられ、三論宗が成立。また、シャーンタラクシタによってチベットに伝えられ、ツォンカパを頂点とするチベット仏教教学の中核となる。8世紀以降のインド密教においても、龍樹作とされる『五次第』などの多数の文献が著された。日本には三論宗が伝来したものの衰退してしまい、この教義を中心に据える特別な流派は存在しない。しかし、大乗仏教のほとんどの宗派において龍樹は重要な存在とみなされ、「八宗の祖」と呼ばれ崇められている。

「新仏教運動」
(Neo−Buddhist movement)とは、近代・現代のインドにおいて主に支配的なヒンドゥー教に対抗し、仏教を再興しようとする動きを指す。仏教復興運動、仏教再興運動ともいう。

アンベードカルの運動
 19世紀からアナガーリカ・ダルマパーラら大菩薩会(マハー・ボーディ・ソサエティ、1891年創設)によるスリランカからの仏教再移入の動きがあったが、特にインド独立後の1956年10月14日、カースト制度に苦しんでいたダリット(旧不可触民)の指導者、ビームラーオ・ラームジー・アンベードカル(初代インド法務大臣、インド憲法の起草者)が三宝・五戒を授けられ、彼を先頭に約50万人のダリットが仏教に改宗したことで、仏教がインドにおいて一定の社会的勢力として復活した。

 アンベードカルが改宗したマハーラーシュトラ州ナーグプルのディクシャブーミには現在、これを記念するストゥーパが建立されている。なおアンベードカル自身は改宗のわずか2か月後に仏教に関する著書『ブッダとそのダンマ』を遺し急逝している。

 ダリットを基盤として復活したインドの仏教はアンベードカルの独自のパーリ仏典研究の結果として「ブッダは輪廻転生を否定した」という見解を得たとする仏教理解に立脚しており、仏教の基本教理とされる輪廻による因果応報をカースト差別との関連から拒否するなど、その合理主義的な教義がダリットらの人権・解放運動、社会運動の一環に過ぎないと指摘される側面もある。このように輪廻否定を積極的に主張する仏教徒グループを、断見派と呼ぶ。

近年の状況
 この動きに対してブッダをヴィシュヌ神の化身と位置づけるヒンドゥー教徒やカースト制度の恩恵を受ける上位カースト層から偏見や反発が生じている。イスラム教徒の弾圧でインドから仏教が消滅したため置き去りにされていた仏教の聖地や寺院の多くは、現在はヴィシュヌ神(の化身の一つとしての釈迦)を祭る場としてヒンドゥー教徒が管理している。これらの聖地の仏教徒への返還、なかでもビハール州ブッダガヤにある大菩薩寺の返還も政治問題化している。またウッタル・プラデーシュ州に勢力を持つ大衆社会党(ダリットを基盤とする政党)にも影響力を有する。
 
 インド政府の宗教統計によれば、インドでの仏教徒の割合は2001年には総人口の0.8%である。一方で、インド仏教徒の指導者である佐々井秀嶺らは、インドの仏教徒はすでに1億人を超えていると主張している。他に信徒の実数を2000万人とする推計もある。上記のとおり、新仏教の担い手となっているのは主にカースト外の不可触民出身者であるが、カースト制度の後進性を批判する一部の進歩主義的な上位カースト出身者にも信徒を広げている。

「新仏教」との呼び名について
 佐々井秀嶺は「新仏教」との呼び名は「アンベードカル博士以前の仏教と私達を意図的に区別し、不可触民というレッテルを貼るもの」「ハリジャンにも等しい呼び方」「同じ人間同士に、新も旧もありません」として間違っていると主張し、仏教復興運動 を称している。いっぽうウィキペディア英語版の項目名は「Dalit Buddhist movement」となっている。このように立場によって呼び名が変わる用語であるので、注意が必要である。

「仏教の創始者を何と呼ぶか」
 ブッダのことを何と呼んだら良いのだろうか。日本ではいろいろな呼び方があり、一定していない。釈迦、釈尊、ブッダ、ゴータマ・ブッダなどがある。ブッダとは、悟った人の意味であるから、固有名詞として使うにはふさわしくない。やはり「釈迦」という名が一番親しみやすい。

ブッダ=目覚めた人、悟った人(固有名詞ではなく、普通名詞)
ゴータマ・ブッダ=パーリ語(古い仏典)の呼び名、ゴータマは「最も良い牛」の意味
ガウタマ・ブッダ=サンスクリット語
シッダッタ=ゴータマ・ブッダの名、「目的を達成した人」の意味
シッダールタ=サンスクリット語
釈迦=釈迦族出身に由来する呼び名
釈迦牟尼(しゃかむに)=釈迦族の聖者、ムニは聖者
釈尊=釈迦牟尼世尊(しゃかむにせそん)の省略形、世尊は先生の意味

「四大翻訳家」
 鳩摩羅什(くまらじゅう)、真諦(しんたい)、玄奘(げんじょう)、不空(ふくう)の4人は、四大翻訳家と呼ばれることもあり、中国仏教史において注目すべき人たちです。

 鳩摩羅什(350〜409、または344〜413)はクマーラジーヴァの音訳で、中央アジアの亀茲(きじ、クチャ)の生まれ。彼の翻訳で正しい仏教が初めて紹介されたといってよいほど中国や日本に多大な影響を及ぼした人物です。インド・西域の言語や中国語に精通し、『大品般若経』などの般若経典類、『法華経』『維摩経』『中論』『大智度論』など数多くの翻訳を成し遂げました。
 また、真諦(パラマールタ、499〜569)は、西インドの出身で『摂大乗論』『大乗起信論』など多くを訳出しています。

 玄奘(602〜664)は『西遊記』の三蔵法師のモデルとなった人物としても有名ですが、河南省洛陽の出身で、中国からインドヘとおもむき、仏教発祥の地で学んだあと、多くの経典を携えて長安に戻ります。彼は多くの協力者を得て精力的に翻訳し、その数の多さでは群を抜いています。また、紀行文である『大唐西域記」も貴重な資料となっています。
 次に、不空(アモーガヴアジラ、705〜774〕は北インドに生まれ、主に密教系の経典を翻訳し重要な役割を果たしています。

 2世紀以降千年余りにわたって訳出された経典で用いられた訳語は、当然ですが時代によって異なるものもあります。ちなみに、羅什以前の翻訳を「古訳」(こやく)、羅什から玄奘以前までを「旧訳」(くやく)、玄奘が新しい訳語を用いてからのものを「新訳」(しんやく)と呼んでいます。(大法輪 2012−11)

キサー・ゴータミー
 ゴータマがある町で、子供をなくした女性に出会った。名はキサー・ゴータミーといい、死んだ子供を抱かえながら、生き返る薬を求めて歩きまわっていた。そこでゴータマは言った。
「その子を生き返らせる方法はある。まだ一度も死者を出したことのない家から、けし(白いからし))の実をもらってきなさい」

 彼女はゴータマの言葉に従い、一軒一軒尋ね歩いているうちに、死者を出していない家はないことに気付き、正気にもどったのである。
 このエピソードは、ゴータマという人物をよくあらわしている。あくまでも現実の出来事を筋道をたてて、やさしく明解に相手に理解させようとするのである。これがイエスであれば「あなたの信仰が子供を救った」といって、子供を生き返らせるだろう。

PDCAサイクルと四諦」
 現在の生産管理や品質管理で採用される手法であるPDCAサイクルとの類似性が指摘されている。
滅諦:計画(Plan)
道諦:実行(Do)
苦諦:評価(Check)
集諦:改善(Act)



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