ヒンズー教

7.象徴(像・シンボル)
「三神一体」(トリムルティ)
 近世の教義では、中心となる3大神、すなわちブラフマー(宇宙の創造を司る神)、ヴィシュヌ(宇宙の維持を司る神)、シヴァ(宇宙の寿命が尽きた時に世界の破壊を司る神)は一体をなすとされている。しかし現在では、ブラフマー神を信仰する人は減り、ヴィシュヌ神とシヴァ神が二大神として並び称され、多くの信者がいる。ヒンドゥー教の神や祭祀は一部形を変えながらも、日本の仏教に影響を与えている。
 3大神はそれぞれ神妃をもち、夫婦共に多様な化身を有する。

■ヴィシュヌ神 : 世界維持の神、慈愛の神、鳥神ガルーダに乗る。10大化身と呼ばれる多数の分身を有する。
ラーマ : ヴィシュヌ神の化身。叙事詩『ラーマーヤナ』で大活躍する。
クリシュナ : ヴィシュヌ神の化身。叙事詩『マハーバーラタ』の英雄、民間に人気のある神。
釈迦:仏教の開祖である釈迦牟尼はヒンドゥー教ではヴィシュヌ神の9番目の化身とされている。
ラクシュミー : ヴィシュヌ神の神妃、富と幸運の女神。北伝仏教では吉祥天。

■シヴァ神 : 創造と破壊の神、乗り物は牡牛のナンディン、トラの皮をまとい首にコブラを巻く。しばしば結跏趺坐し瞑想する姿で描かれる。北伝仏教では大自在天(降三世明王に降伏され仏教に改宗したとされる)。
マハーカーラ : シヴァ神の化身。チベット仏教など仏教においても信仰される。北伝仏教では大黒天。
パールヴァティー : シヴァ神の神妃、ヒマラヤ神の娘、穏やかで心優しい 
ドゥルガー : パールヴァティーの化身で戦いの神、水牛に化けた悪魔を倒す美しい神像が有名。
カーリー : パールヴァティーの化身でドゥルガーよりも荒々しい戦いの神。コルカタ(カルカッタ)の地名はカーリーから来ている。

■ブラフマー神 : 世界創造の神。水鳥ハンサに乗った老人の姿で表される。北伝仏教では梵天。
サラスヴァティー:ブラフマー神の神妃、北伝仏教では弁才天。

 3大神は、信者個人の信仰においては並立しているわけではない。たとえば「シヴァ神」を最高神と崇める人にとって、「ヴィシュヌ神」は劣位ではあるが敬うべき神である。また神話の中で3大神の化身と共に活躍する神や、3大神の子神も信仰されている。 もっと詳しく


ブラフマー

ヴィシュヌ

シヴァ




■ガネーシャ : シヴァ神の子供で象の頭を持つ神、鼠に乗る。富と繁栄、智恵と学問を司る。北伝仏教では歓喜天(聖天)。
■ハヌマーン : 外見が猿の神、叙事詩『ラーマーヤナ』でラーマ王子を助けて活躍する。身体の大きさを自由に変えられる。孫悟空の元になったと考えられる。
■インドラ : 雷神、天空神。『リグ・ヴェーダ』の中心的な神で、古くバラモン教の時代には盛んに信仰された。北伝仏教では帝釈天。


ガネーシャ

ハヌマーン

インドラ




「ミトゥナ像」
 ミトゥナ(mithuna)とは、サンスクリットで,1対の男女,さらにその性的結合を意味する。ミトゥナ像はインド美術の各時代にわたって多数の造例があり,この宗教美術の官能的な一面を代表している。ボードガヤーやサーンチーなどの古代初期の仏教彫刻では,単に男女が並立しているにすぎないが,グプタ朝時代には接吻したり,体を接触させたものがあり,エローラ,カジュラーホ,ブバネーシュワル,コナーラクなどのヒンドゥー教彫刻では性的結合のさまざまな体位を表したものも多い。








「シヴァリンガ」
 ヒンドゥー教のシヴァの寺院では、神体としてシヴァリンガがシンボルとして安置されており、それが礼拝の対象になっている。シヴァリンガは、リンガとヨーニの2つの部分からなり、内側が受け皿状の円形または方形のテーブルの横に油が流れ出る腕が付いているヨーニの中心部に、リンガと呼ばれる先の丸い円柱が立っている。

 ヨーニは女性器の象徴で、リンガは男性器の象徴であり、性交した状態を示す。ただし、我々は性交しているシヴァを女性器の内側から見ている形になっている。これは、シヴァ神が女性と性交をして現われたのがこの世界で、それが我々の住んでいる世界という意味になっている。










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