キリスト教
1.概略
キリスト教とは、ナザレのイエスをキリスト(救い主)として信じる宗教。イエス・キリストが、神の国の福音を説き、罪ある人間を救済するために自ら十字架にかけられ、復活したものと信じる。その多くは「父と子と聖霊」を唯一の神(三位一体・至聖三者)として信仰する。世界における信者数は20億人を超えており、すべての宗教の中で最も多い。
(ラテン語:Religio Christiana、英語:Christianity)
「分類」
キリスト教は、その歴史とともに様々な教派に分かれており、現在はおおむね次のように分類されている。
■初代教会 - 最初期の教会、下記の諸教会の前身
■西方教会 - 西ローマ帝国・西欧で発展した教会
カトリック教会 - ローマ教皇をトップとする派
聖公会(英国国教会) - カトリックとプロテスタントの中間に位置づけられる性格
プロテスタント - 16世紀の宗教改革運動によりカトリックから分離した諸教派。主な教派として次のようなものがある。
ルーテル教会(ルター派)
改革派教会(カルヴァン派、長老派教会、改革長老教会)
会衆派教会
メソジスト教会
バプテスト教会
アナバプテスト
■東方教会
正教会(ギリシャ正教) - 東ローマ帝国・ギリシャ・東欧で発展した教会
東方諸教会 - 非カルケドン派の諸教会と、アッシリア東方教会
「アジア地域」
アジア諸国をみると、韓国は第二次世界大戦後に福音派のリバイバル運動でキリスト教徒の数が急増し、仏教徒25%に対して、プロテスタント20%・カトリック7.4%となっている。フィリピンは、カトリック83%、それ以外のキリスト教10%、イスラム教5%となっている。その一方で、ベトナムは仏教徒が80%であり、中国は公式統計は不詳だが無宗教が多数派とみられ、それ以外では歴史的にも道教・仏教が主であってキリスト教の信徒数は極めて少ないと推定される。
また、中央アジアでは正教会、西アジアでは東方諸教会の信徒が少ない割合で存在している。韓国・フィリピン・東ティモールを除けばアジア諸国では、仏教、道教、ヒンドゥー教、イスラム教のいずれかの信徒が多数派を構成していて、キリスト教の信徒は少数派である。
「日本国内」
日本国内ではキリスト教の信徒数は約260万人程度であり人口比では明治維新以後に1%を超えた事は無く(日本におけるカトリック信徒の人口比率は0.3%程度であるが長崎県では約4%である)、神道約1億600万人あるいは仏教約9,200万人という数字に比すと少数派である。G8の国々の中で、人口構成上キリスト教徒が多数派でない国は東アジアの一員である日本だけという特徴がある。
日本では、行政や文化政策において、国民の信仰が何であるかということは重要視されていないため、詳細な統計は行われたことがない。そのため、日本国内のキリスト教徒に限らず、神道、仏教なども含めて、全宗教の正確な信徒の数は不明である。
「キリスト教について」
日本国内ではキリスト教各派の中でカトリックとプロテスタント諸派の存在感が大きく、ロシア正教会などの正教会系は目立たない。ただし、カトリックにしてもプロテスタントにしても、日本の信者数は世界的に見て異例に少ない。キリスト教の信者数が人口の1%未満にとどまるのは世界でも日本だけだ。
その一方、キリスト教への反発も少なく、キリスト教に由来するクリスマスなどの行事は年中行事として根づいている。信者にはならないが、キリスト教へのシンパシーは感じているというのが日本人一般の心理である。ひとつ特徴的なのは、カトリックの信者には社会的に地位の高い人が多いということだ。
シンパシー醸成に貢献しているのが、数多くのミッションスクールの存在である。大まかにいうとカトリックは修道会、プロテスタントは宗派を単位として私立学校を運営している。
世界的に見るとカトリックの信者が圧倒的に多く、10億人を超えている。ローマ法王を中心とする堅固な組織を待ち、教義は厳格だ。カトリックの家庭に生まれた子供は幼いうちに洗礼を受け信者となる。
一方、プロテスタントには統一した教義はないに等しく、極端にいえば牧師が違えば聖書解釈も異なる。カトリックにおいては人を救済するのは教会であり神父だが、プロテスタントではあくまでも信者自身で、牧師は厳密にいうと聖職者とはいえない。また、内面の信仰を重視するため、洗礼を受けるのはカトリックよりも遅く、基本的には成年に達してからだ。
島田裕巳:宗教学者(プレジデント 2011-12-5)
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