キリスト教

2.教祖・重要人物
「イエス」(前4〜後30)
■誕生 
受胎告知 父はヨセフという名の大工で母はマリア。マリアの前に、ある日天使ガブリエルが現われ、聖霊により神の子を身ごもったと告げました。それを知ったヨセフは戸惑いましたがマリアを妻に迎えました。(処女懐胎)

降誕 その頃、皇帝アウグストゥスの人口調査が実施され「すべての民は出身地で登録せよ」という命令が下り、ヨセフはマリアを伴いガラリヤの町ナザレからヨセフの先祖ダヴィデ王の出身地のベツレヘムへと旅立ちました。ベツレヘムにいる間にマリアは月が満ちて宿の家畜小屋でイエスを出産しました。(紀元前8〜4年)



羊飼いたちの礼拝 夜番をしていた羊飼いたちの前に天使が現れ、「メシア降誕」を告げました。御告げに従ってイエスを探し当て礼拝した彼らは人々にも知らせ、多くの人々を不思議がらせた。

東方の三博士の礼拝 「ユダヤ人の新しい王者が誕生したことを示す星を見たので、その子を拝見したい」とメシア降誕を知った東方の占星術の3人の博士が、星に導かれて家畜小屋まで行き、イエスを礼拝しました。 

ヘロデ大王による幼児虐殺 ユダヤを統治していたヘロデ王は、メシア降誕を知った占星術の博士たちがエルサレムを訪れたので、これに脅威と不安を抱き「ベツレヘムとその一帯の2歳以下の男子を皆殺しにせよ」という命令を出しました。

エジプトへの逃亡 ヨセフとマリア、幼子イエスは天使に導かれてエジプトに逃れ、難をまぬがれました。ヘロデ王の死後、ヨセフ一家はエジプトから故郷ナザレに戻りましたが、イエスにはヤコブ、ヨセ、ユダ、シモンという弟と数人の妹ができました。

神殿奉献 マリアは律法で定められた産後の清めの期間を終えた後、律法に従って長子であるイエスをエルサレムの神殿に捧げに行きます。そこで救い主を待ち望んでいたシメオンと女預言者アンナに会い、幼子の将来についての予言を聞いた。彼らは救い主の誕生を民衆に語った。


受胎告知
フラ・アンジェリコ

キリスト降誕
マルテン・デ・ボス

東方三博士の礼拝
ファン・デル・ウェイデン

嬰児虐殺
ニコラ・プッサン



エジプト逃避途上の休息
フィリップ・オットー・ルンゲ

神殿奉献
ジャバンニ・ベリーニ




■少年時代
 イエスが12歳になった時、ヨセフとマリアは過越祭の慣習に従ってイエスを伴いエルサレムの神殿に出かけました。この時神殿の境内でイエスは律法学者との間で大人たちが驚くほど賢い受け答えをしたといいます。
 その後イエスは30歳過ぎまで父親の仕事を手伝いながらガリラヤ地方のナザレで過ごしました。

■受洗、荒野の誘惑 
洗礼(バプテスマ) イエスが30歳になった頃、ヨルダン川の岸辺に洗礼者ヨハネと呼ばれる預言者が現われました。彼は「悔い改めよ、天国は近づいた」と述べ罪の許しを得させる悔い改めの洗礼をヨルダン川で授けていました。ヨハネはイエスにも洗礼を授けましたが、イエスが水の中から上がると天が裂けて鳩のように聖霊(神の霊)が降り、天上から「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者」という神の声が聞こえました。

サタンの試み 聖霊に導かれて荒野に行き、40日間の断食の後、サタン(悪魔)の誘惑を受けるが退けます。荒野での試練の後イエスはガリラヤで宣教を開始します。

キリストの洗礼
アンドレア・デル・ベロッキョ

山上の誘惑
ドウッチョ・ディ・ブオンセーニャ





■宣教活動 
愛と神の国の思想 ガリラヤに戻ったイエスは『時は満ち、神の国は近づいた、悔い改めて福音を信じなさい』と宣教活動を始め、パリサイ派や祭司たちの律法主義と堕落を批判します。神の愛が身分や貧富の差に関係なく全ての人に及ぶこと、その神を愛し、信じる人はおのれを愛するように隣人を愛し、敵のためにすら祈るべきことを説きました。

山上の垂訓 教えの最も有名な部分は、マタイによる福音書5章3節から10節までの「〜は幸いです」と8回繰り返されるところであり、幸福の説教(真福詞)と呼ばれています。
 心の貧しい者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。
 悲しむ者は幸いです。その人は慰められるからです。
 柔和な者は幸いです。その人は地を相続するからです。
 義に飢え渇いている者は幸いです。その人は満ち足りるからです。
 あわれみ深い者は幸いです。その人はあわれみを受けるからです。
 心のきよい者は幸いです。その人は神を見るからです。
 平和をつくる者は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるからです。
 義のために迫害されている者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。

イエスの奇跡 イエスは社会的な弱者や病人、差別された人々をいやし、障害や病気をなおす奇跡をおこしました。女性や下層の民衆の多くがイエスを信じ、漁師や徴税請負人らも弟子となり、彼らはイエスを神がつかわした救世主(メシア)、すなわちキリストであるとみなしました。イエス自身の宣教活動は長くても3年ほどでした。(奇跡の漁/網に大量の魚がかかる、ラザロの復活/葬られたラザロを蘇生させる)

十二使徒 12人の弟子を選び、彼らに特権を与えました。イエスによって選ばれたのはペトロ(シモン)、アンデレ、ゼベダイの子ヤコブとヨハネ、フィリポ、バルトロマイ、トマス、マタイ、アルファイの子のヤコブ、タダイ(ヤコブの子ユダ)、熱心党のシモン、イスカリオテのユダの12人でした。

イエスの変容 祈るために弟子たちを連れて山に登ると、イエスの姿が光り輝き、弟子達が見守るなか、旧約の預言者モーセとエリヤが現われてイエスと語り合ったという。

エルサレム入城 民衆の歓呼の中、弟子達と共にイスラエルの聖都エルサレムに入ります。神殿内で両替商などが商売をしているのを見て「わが父の家を商売の家とするな」と激怒した。

オリーブ山の説教 イエスはオリーブ山で終末的な予言的説教をおこないました。


山上の垂訓
カール・ハインリヒ・ブロッホ

奇跡の漁
ラファエロ・サンティ

ラザロの復活


十二使徒の伝道の旅立ち
シャルル・グレール



キリストの変容
ジャバンニ・ベリーニ

神殿から商人を追う払うキリスト
ヤコブ・ヨルダーンス

オリーブ山のキリスト
ジャバンニ・ベリーニ





■受難と十字架 
受難 イエスの神の国運動は、神殿体制を維持し、律法を厳格に守ることを最も重視するユダヤ教指導者にとって、既存の秩序の破壊であり、許されるものではありませんでした。 

最後の晩餐 イエスはパンを取り、それを裂いて「取りなさい、これはわたしの体である」と言い、ぶどう酒を手にして「これは多くの人のために流すわたしの血、新しい契約の血である」と言いました。これが今日まで続くキリスト教の重要な儀式である聖餐式の起源で、この儀式で信徒たちが授かるパンとぶどう酒は、十字架の上で裂かれるイエスの身体と流される血を象徴しており、パンとぶどう酒を食することでキリストの死によってもたらせられる救済の力を受け取ることを示しています。

ゲッセマネの祈り 晩餐のあと、イエスはオリーブ山西麓にあった園で祈り、主の意志に従うことを示します。

ユダの接吻と捕縛 ゲッセマネで祈るイエスのところに、裏切った弟子ユダに率いられた人々と兵士達がやって来て、ユダの接吻を合図にイエスを捕えます。このとき弟子たちは、すでに皆イエスを見捨てて逃げていました。

審問とむち打ち ユダヤ教の大祭司らがイエスを最高法院の審問に引き出し、ローマ提督ピラトに訴えました。自らをユダヤ人の王であると名乗り、また「神の子」あるいはメシアであると自称した罪により、ユダヤの裁判にかけられました。
 ローマ総督ピラトはイエスが無実であることを知って、かれを釈放しようとしますが、群衆の「十字架にかけろ」という声に押され、ついに死刑の判決を下してしまいました。

ゴルゴダの道 荊(いばら)の冠をかぶせられ、自分の処刑に用いる重い十字架を背負ったイエスは刑場のあるゴルゴタの丘に続く道を歩かされました。二人の強盗と共に十字架につけられたイエスの頭上には「ユダヤ人の王」と書かれた木の札が打ちつけられていました。(ヴィア・ドロローサ=苦難の道)

磔刑 12時頃天が突然暗くなり、3時頃、母マリアと使徒ヨハネが見守る中、イエスが十字架上で息絶えると、神殿の幕が真っ二つに裂けました。イエスは「わが神、わが神、なぜわたしを見捨てられたのか」と悲痛な叫びを上げ、ついに大声をあげて息絶えました。

埋葬 アリマタヤのヨセフ(ユダヤ人議会の議員)が遺体を引き取り、イエスを理解するユダヤ人指導者ニコデモ、母マリア、ヨハネが立ち会うなか、ゴルゴダの丘のふもとに埋葬されました。


最後の晩餐
ヤコボ・バッサーノ

ゲッセマネの祈り
アンドレア・マンテーニャ

キリストの捕縛
ジョット・ディ・ボンドーネ

この人を見よ
クエンティン・マセイス



ゴルゴダへの道
ジョバンニ・バチスタ

磔刑
アンドレア・マンテーニャ

アビニョンのピエタ
アンゲラン・カルトン

キリストの埋葬
カラバッジョ



■復活と昇天 
復活 3日目、マグダラのマリアが墓のそばで泣いているとイエスが現われ、皆に復活を伝えるよう語りかけました。

エマオの晩餐 2人の弟子がエマオをという村に行く途中、イエスに会い、晩餐をともにしました。

昇天 復活の40日後、オリーブ山で弟子達が見守るなか、天に昇っていきました。

 その後、パウロにより「イエスの死は、人類の罪を救うためであった」とする考えが生み出され、異邦人(ギリシャ、ローマ)の間に広まっていきました。

キリストの復活
ピエロ・デラ・フランチェスカ

エマオの晩餐
カラバッジョ

主の昇天
ジョット・ディ・ボンドーネ






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