キリスト教


5.宗教行事・祭礼
「イースター」(復活祭)
 復活祭(イースター、復活大祭、パスハ)はイエス・キリストの復活を祝うキリスト教最大の祝祭日であり、かつもっとも古く成立した祭のひとつであるが、西方教会における現在の習慣にはゲルマン民族の春の祭りの影響が指摘されている。色をつけた卵(イースターエッグ)を配るなどの習俗がそれに該当する。なおユダヤ教の過ぎ越しにも、ゆで卵を食べる習慣があり(塩水に入れた卵を紅海を渡るユダヤ人に見立てる)、ゆで卵の習慣はユダヤ由来であるとする説もある。

 英語圏やドイツでは、ウサギをかたどったチョコレートやパンが作られる。ウサギは多産なので生命の象徴であり、また跳ね回る様子が生命の躍動を表しているといわれる。

「クリスマス」(降誕祭)
 クリスマスはイエス・キリストの生誕を祝う記念日であるが、イエスの誕生日は知られていない。ローマ帝国時代、ミトラ教の冬至の祭りがキリスト教に取り入れられたと考えられている。この祭りは西方で始まり、12月25日に行われた。一方、東方では、元来、キリストの生誕は洗礼とともに1月6日に祝われていたが、4世紀には次第に12月25日が生誕を祝う日として定着していく。ヨハネス・クリュソストモスは12月25日をクリスマスとすることを支持した386年の説教で、この祭りをローマの習慣であるとし、アンティオキアでは10年前から始まったとしている。

 また、クリスマスに付随する習俗の多くは、キリスト教の教義とは無関係であり、キリスト教が布教されるにあたって土着の習俗を飲み込んでいったことを物語る。たとえばクリスマスツリーを飾る習慣は15世紀に南ドイツで現れ、ハノーヴァー朝とともにイギリスに渡り、そこからキリスト教社会に広がったものである。サンタクロースは聖ニコラスの伝説や、イギリスの Father Christmass の伝承などを使ってニューヨークの百貨店が19世紀に作り上げ、世界中に広まったキャラクターである。

レント(四旬節)=復活祭の46日前からの40日間、食事制限などによりキリストの苦しみを分かち合う。四旬節の前には謝肉祭(カーニバル)がある。
アセンション・デイ(昇天日)=イエスの昇天を祝う。復活祭の40日後に行われる。
ペンテコステ(聖霊降臨日)=聖霊が使徒たちの上に降臨したことを記念する。昇天日の10日後。
アドベント(待降節)=クリスマスの4度前の日曜日から前日まで。1週ごとにろうそくを1本づつ灯していく。


イースターエッグ

クリスマス

サンタクロース


「バレンタインデー」
 西方教会地域の一部には、男女の愛の誓いの日として2月14日に親しい男女間で贈り物をする習慣がある。これもキリスト教の教義には根拠がなく、もともとはローマ帝国時代の女神ユノの祝日が起源であり、それが後になって殉教聖人のバレンタインに結び付けられたのだろうと言われている。
 日本には製菓会社が盛んにプロモーションを行って女性から男性へチョコレートを贈る習慣が定着したが、1990年代ごろから他の業界も積極的に販売政策に利用するようになってきている。俳句の季語に取り入れられるほどになじみのある行事となっているが、これもまたキリスト教の教義には根拠がない。

「ハロウィン」
 ハロウィン、またはハロウィーンはイングランド・アイルランドおよびその移民の間で行われた民間の祭りであり、直接はキリスト教と全く関係がない。ハロウィンで出てくる幽霊、精霊、魔女などは明らかに非キリスト教的存在である。この祭りの起源は元々ケルト人のドルイド教の祭だっただろうと推定されているが、カトリックの諸聖人の日(万聖節)と日付の上で結びついており、その前晩である10月31日に行われる。

 イングランドでは中世以降廃れたが、アイルランドに残っていた習俗が移民を通じてアメリカ合衆国で広まった。近年はヨーロッパや日本でもカボチャのランタン(ジャックランタン、ジャック・オ・ランターン)を飾るなど、一部の習俗が入ってきている。


バレンタイン

ハロウィン

ジャックランタン


イタリアの年間行事



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