1980 日本
監督: 横山博人
出演:、江藤潤、朝加真由美

 会社に勤めながらマンガを描いている青年。彼は通勤電車の中で、女性にいたずらをして楽しんでいる。ある日、彼はふるさとの軍艦島に帰るが、既にその島はコンクリートのかたまりと化し、廃墟となっていた。電車で帰る途中、年上の女性に犯されそうになり、ショックを受ける。

 この映画の基本となっているのは、次のようなことだと思う。彼が女性にいたずらをしていた時は、この世界がまともで、自分が異状なことをしているんだという甘えの意識があった。しかし、ふるさとが廃墟となり、女性に犯されそうになるという体験を通して、自分が今まで信じていた世界というのが、実はとんでもない化け物であることを悟った。そして、やっと彼は自分の信じられるものを求めようとしたのだった。とてもおもしろかった。


(ストーリー)
 漫画家志望の純は遊園地の修理工場で働いている。彼には洋子という恋人がいるが、手ひとつ握ることが出来ない。洋子はそんな純が好きだが、また優柔不断なところに歯がゆいものを感じている。

 一方、純にはもう一つの顔がある。職場に向かう電車の中でやる痴漢行為だ。さまざまな女性が一見純真そうな純の魔手に侵される。女教師風の娘、子連れの女、OL、黒ブーツの女等々。そんなある日、純は洋子に痴漢行為を目撃されてしまう。ショックを受けた洋子は純の前から姿を消し、行き場を失った純は、故郷のことを想いだした。「そうだ親父の墓参りでも行ってみよう」

 こうして、純は東京を離れ、故郷、長崎の軍艦島に渡るが、そこは既に無人島になっていて、父の墓も見つからなかった。すべてに絶望した純は、再び故郷を棄て、東京に向かった。車中、純のとなりに美しい女が座った。純はフラフラと女に手を伸ばす。すると、女はいきなり立ち上がり、純の腕を引っばってトイレの中に連れこんだ。女の頬につたわる涙。純は、女に誘われるまま、オトコにされてしまうのだった。女が去ったあと、純は列車内を狂気のように走り続ける。

 翌朝、純はあえぎながら東京の下宿に辿りついた。そこには聖母のように安らかに眠っている洋子の姿があった。

(キネマ旬報)


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