独裁者 アドルフ・ヒトラー……大衆心理をつかむ


 ウィーンの造形美術大学の受験に二度失敗し、失意の生活を送っていた若者が、第一次世界大戦でドイツ軍に入隊して戦功を上げ、戦争こそが人間の理想状態である、として政治活動を始めました。アドルフ・ヒトラー(1889〜1945年)です。
 ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)結成から13年後、彼はドイツ首相の座に就きました。そして隣国ポーランドに侵攻して第二次世界大戦に突入、600万人ともいわれるユダヤ人を虐殺したのです。

 なぜ、このような男が、当時世界で最も民主的といわれたドイツで独裁権力を握ることができたのでしょうか。ナチス草創期、ミュンヘン一撲に失敗して投獄されていた時に書かれた「わが闘争」で、彼はその戦略を明確にしていました。
 大衆とは女性のようなもので、弱い男を支配するよりも、強い男に服従することを好むのだ。しかもその強さは、敵を徹底的に攻撃し、敵の正しさをほんの少しでも認めないという姿勢によって印象付けられるのだ…。

 ひどい女性蔑視ですが、大衆心理の一面を突いていました。だからこそ、「諸悪の根源であるユダヤ人と徹底的に戦う」というヒトラーの自信満々の大きなうそに、人々はいとも簡単にだまされていったのです。

(琉球新報 2006-11-17)


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