ディーゼルエボリューション



■ヨーロッパでは乗用車の半分以上がディーゼル
 自家用車の平均走行距離が日本よりはるかに長いヨーロッパでは、歴史的にディーゼル乗用車が根強く売れていた。EU全体でCO2低減政策に取り組み、各国の自動車メーカーが競うようにディーゼルを「速くて快適、エコで低燃費」に進化させた今、下のグラフにもあるように、日本とは比較ならないくらいディーゼル乗用車の人気が高い。最新ディーゼルの普及しているヨーロッパでは、おなじみのハイブリッドも日本と比較すると苦戦気味である。

 ディーゼル本来の低燃費をさらに進化させつつ、排ガスなどのディーゼルの弱点を払拭するためにハイテクを駆使した最新ディーゼル車は、ヨーロッパでは総じてガソリン車より高価。また、現状では日本の排ガス規制の方が厳しく、ヨーロッパの状況を日本にそのまま当てはめることはできないが「長い目で見れば経済的で、クルマとしての魅力が大きい」という最新ディーゼルがヨーロッパでは日本からは想像しがたいほど人気が高いのは事実だ。

【各国の新車販売比率】2011
 EU15ヵ国……ディーゼル 55.87%   その他 44.13%
 ドイツ………ディーゼル 45.2%   その他 54.8%
 フランス……ディーゼル 72.6%   その他 27.4%
 イタリア……ディーゼル 55.1%   その他 44.9%
 日本…………ディーゼル 0.26%   その他 99.74%

■日本は軽油があまり、輸出してしまっている
 ガソリンや軽油などの燃料は、原油を蒸留することで精製される。つまり、原油を精製すると、ガソリンや軽油を含む多様な燃料や物質がある一定の比率で自動的に生成されてしまう。これを「連産品」という。現在は需要の多いガソリン比率を高める技術はあるがそれでもガソリンだけを精製するのは不可能。昨今の不況でトラック物流が頭打ちの日本では、必要なガソリンを精製すると軽油があまってしまうのが現状で、軽油を海外に輸出しているという。

 もちろんそうした輸出にも燃料として原油を使うわけで、せっかく輸入した資源を、わざわざ石油を使って海外に再流出させていることになる。石油というエネルギーを一滴も無駄にしないためには、精製された燃料はすべて国内消費するのが最も効率的。「ガソリンとディーゼルのどっちがいいのか?」ではなく、ともにバランスよく普及して、ガソリンも軽油も無駄なく消費するのが理想だ。

【おおよその原油精製比率】
 石油化学原料……17%
 ガソリン…………28%
 灯油………………17%
 軽油………………15%
 重油………………22%
 アスファルト……1%

(朝日新聞 2012-8-25)



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