アイデア商法で復活した書店



 「あと一年頑張って駄目なら店をやめます」。朝礼で店員を前に宣言したのが2003年夏。勝負に出た「売れない文庫フェア」が話題を呼んだのを契機に、次々とアイデア商法を展開。今は「読まずに死ねるかフェア」を構想中だ。
 創業約60年を誇る札幌市の「くすみ書房」の二代目。地下鉄延伸で客足が遠のき、売り上げは年々減少していた。全国チェーンの大型店の進出など、町の本屋の環境は厳しさを増すばかりだ。

 窮地を救ったのも本だった。ビジネス書の「非常識の中に成功がある」との言葉をヒントに同年10月、新潮文庫とちくま文庫の売り上げ下位の計1500冊を並べた。売れない本は置かないのが本屋の論理。そのため時代を超え読み継がれる「次郎物語」さえ本屋にない状況。「このままでは良書が消える」との危機感もあった。マスコミで取り上げられ、翌月の文庫の売り上げは前年比3倍の大幅増。「うちも売れてないから扱って」という老舗出版社もあった。

 活字離れが進み、本屋から中学生の姿が消えたのは「彼らが主役の棚がないからだ」。その後、お薦めの本を紹介するフェア「本屋のオヤジのおせっかい中学生はこれを読め!」を始めたところ、各地の書店の共感を呼び道内や東海地方など全国に広がった。
 本の量や立地では大型店にかなわない。それでも「地域と一緒に歩むのが私たちの道。フェアはささやかな抵抗です」と笑う。札幌市生まれの55歳。

(琉球新報 2006-10-28)



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