沖縄尚学9年ぶりV



 第80回記念選抜高校野球大会(日本高校野球連盟、毎日新聞社主催)の第14日は4日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で決勝が行われ、3年ぶり4回目出場の沖縄尚学が、初出場の聖望学園(埼玉)を9対0の大差で下し、9年ぶり2度目の優勝を飾った。沖縄県勢としても春、夏通じて2度目の栄冠。序盤から得点を重ね、エ一ス右腕の東浜巨(なお)投手が6安打で完封した。

 比嘉公也(ひが こうや)監督(26)は沖縄商学が優勝したときのエースで、指導者として再び頂点に立った。聖望学園は埼玉県勢として40回大会の大宮工以来40年ぶりの優勝を目指したが、あと一歩及ばなかった。

■比嘉公也(ひが こうや)監督
 不思議な光景に思えた。9年前のちょうどこの日、71回大会の沖縄尚学のエースとしてつかんだ栄冠。それを、手塩にかけて育てた子どもたちが手にした。「恵まれているとしかいえません」
 沖縄に初優勝をもたらしたあの春、酷使してきた左ひじの痛みをこらえていた。愛知学院大に進んでも回復せず、公式戦登板はわずか1イニング。スタンドから応援する立場に回り、そこで、自分を支えてくれていた入たちの存在に気づく。指導者の道を志すきっかけだった。

 卒業後は沖縄に戻り、教員免許を取るため、地元の大学の聴講生となった。06年、社会科教諭として母校に採用され、かつて自分の姿をテレビで追いかけた部員とグラウンドを駆け回る。暗転した野球人生を挫折とは考えない。選手として甲子園に最も長く居続け、故障と何年も闘った経験すべてを、毎日の指導に生かせるからだ。

 ふだんは優しい「兄」。エラーやバントミスでしかることはないが、周囲への感謝の気持ちが見えない時は、厳しい言葉が飛ぶ。「失敗は誰にでもあるけれど、誰でもできることをしないのはおかしい」 決勝に臨むベンチで、「おれが采配ミスしたら助けてよ」と伝え、選手たちを発奮させた。「本土」への特別な意識はない。代わりに、頂点を極めるのにふさわしい実力を備えた自信がみなぎる。「優勝投手」の成長した姿を、甲子園が見届けた。

(2008-4-5 朝日新聞)



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